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私の恋に気づいたらあなたはなんというでしょうか

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あなたと会うことが楽しみでした。
待ち合わせ場所の大阪駅の御堂筋口で、可愛いブラウスとジャンパースカートに身を包み、コテコテのロリータスタイルのあなたを見つけると、私はわざと隠れて、人混みの中のあなたを見つめてしまいました。あなたは、人混みが苦手なのでしょう。いつも不安そうな顔で、じっと、どこを見るでもなく立っていました。この時代と、この場所にそぐわないあなたの姿を見ていると、私は一層、あなたが愛おしくなるのです。

あなたは、友人を作らず、洋服と物語だけを愛していました。それは、明らかに生まれた国と時代を間違えていました。私は、そんなあなたに、昨夏の始まりに出会いました。

私は、人形の服のデザイナーを探している。どこかにロリータの服のデザインが出来る人はいませんか?と、服飾の先生に聞いたとき、紹介してくれたのがあなたでした。
クラシカルなロリータのワンピースに身を包み、猫のような瞳で言葉少ないあなた。

ずっと後になってあなたは、この日の事を私に言ってくれましたね。
「実は、行きたくなかった。知らない場所、知らない人に会いたくなかったけど、先生の顔をたてるために、頑張ったの」
私は、あなたに苦痛を与えていたのかと思い、胸が締め付けられました。
あなたは、いつでも誰かに寄り添うことなく生きている。
でも。
あの時、私の人形の服屋をしたいという夢を、真剣に笑顔で聞いてくれたあなたに、私はすぐに恋に落ちていました。

そして、私は、打ち合わせと称しては、何度もあなたを誘い出しました。
あなたは、いつも笑顔で、可愛い姿で現れました。

年が開けて、二月のある日。
私は、いつものように、あなたに「人形の事でお話があります。日曜日に会えませんか」とメールをしました。(あなたは電話も苦手のようでしたので、私はメールしかしませんでした。でも、そのメールもあなたは時折、辛い時があると言うことがありました)

あなたは、断りました。
「引っ越すんです」
私は、一気にあなたを失う恐ろしさと悲しさに襲われました。
あなたは、遠い街から服飾の勉強の為に、この街にやってきたのです。
だから、卒業するので故郷に帰るのです。
(この街にいれないのですか?)
私は聞けません。
あなたは、
「いれません」
と、言うに決まっています。
(私と一緒に暮らしませんか?)
私は言えません。
あなたは、
「無理です」
そう言うでしょう。

一度だけあなたは、言いました。
就職活動で、慣れない人との会話、移動で疲れていたあなたは、冗談交じりに、
「仕事見つからなければ、あなたに雇ってもらおうかしら?」
私は、嬉しくてたまりませんでした。何度も、あなたを雇うために計算を繰り返しました。けれど、私はあなたを雇うお金がありませんでした。

そして、あなたは、故郷に帰ることになりました。
私は、卒業式の前の日に、あなたをUSJに誘いました。

あなたは、子供のようにはしゃぎ、喜び、
「死んでも良いと思う気持ちで楽しんでいる」
と良いながら、ジェットコースターを楽しみました。
そんなあなたを私は、写真に収めました。
でも、二人だけの写真は一枚も撮れませんでした。
帰り際、私は卒業祝いにあなたの好きなメゾンの日傘をプレゼントしました。
中には、「卒業おめでとう。これからも、仲良くしてね」と、当たり前の文章を入れました。
「あなたを愛しています。故郷に帰らないでください。あなたと一緒にいたい」とは、最後まで書けませんでしたから。

私にとってあなたは、愛や恋では語れない存在。
どれだけの距離があったとしても、必ず引きつけあえると信じています。
6月、私はあなたに久しぶりに会うことができます。
その時、私は相変わらず立派な先輩、愉快な人、しっかりした大人を演じます。
再会に喜び泣きじゃくる心を隠しながら。