自己責任の果て
ズドンと響いた鈍い音に
使節団の二人は顔を見合わせた
「今の音は。やはり噂は本当だったんだ」
「福祉予算軽減のためとはいえ、公共料金や家賃、
税金を一度でも滞納したら理由を問わず死刑なんて狂っていますよ」
ひそひそと母国語で話し合っていた二人の前に
作業を終えた男が笑みを浮かべて戻ってきた。
「君はこの仕事に誇りを持っているのかね」
通訳を通した問いに、男は頷く
「全体の福祉を守るために、自己責任を怠ったものに罰則を与えるのはとうぜんです
やりがいのある仕事だと思ってますよ」
「しかし、人間色々と思わぬこともあるだろう」
「それを予想するのが知恵というものです。自己責任という言葉はもともとあなた方のお国から
入ってきた言葉だと思いますが」
男の言葉に、使節団はもう一度顔を見合わせ、再び母国語でささやきあった。
「たしかにそうだが、この国の人々はどうも極端に走りすぎる」
「そうだろう、私は昨日この国の辞書をみて驚いたよ。お互い様
思いやり。助け合い。そういった言葉が全部消えているんだ。」
「・・・・・滅びるのも時間の問題ですね」