キャミソール。
注意力散漫な読書程時間の無駄もない。ふと文庫本から視線を外し、胸元に目を遣ると、キャミソールを縁取るレースに穴が開いていた。
暫くその隙間と見つめ合う。
水色ドットのそれは、結構気に入っていた、けれど。
やはりみっともない。
安物だし、そろそろ伸びてきたし、いっそ捨てて仕舞おうか。
いやいや姐さん、まだいけるっすよ。外は無理でも部屋着としてはまだまだ現役っすよ。
中国製の癖に達者な日本語で陳情しやがる。
偶然にもそのほつれは丁度合わせ目に近いところだったので、私は潔くざっくりとはさみを入れた。
より深いVゾーンから覗く非常にささやかな谷間を見て、私は嘆息した。