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子狸タヌ太の大冒険

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子狸タヌ太の大冒険

 タヌ太は森の学校の小学4年生、元気いっぱいの男の子です。
今日はタヌ太が待ちに待っていた遠足の日です。
お母さんが作ってくれたお弁当と、大好きなチョコレートのお菓子と バナナをリュックに入れて元気いっぱいに出かけました。
行き先は里の牧場です。
うっそうとした森しか知らないタヌ太達は見るものがみんな新鮮で興味深いものです。
山が切り立ったところに出ると、先生が「あのがけの土を良く見てごらん。土の色やデコボコの感じが、それぞれ違うものが重なって縞のようになっているだろう。あれを地層と言うんだ。あの地層を調べると、貝殻がたくさん入っている層があって、大昔はここが海だった事が分かるんだ」と教えてくれました。
タヌ太は、大昔ここが海だったなんて ビックリしましたが、そんな事が分かるなんて凄いと思いました。そして(僕も大人になったら 科学者になって、みんなが知らない事を調べて教えてあげたいな)と思いました。
途中で牛が繋がれているのを見ました。
牛は絵本で見るよりずっと大きくて、急に「モーッ」と大きな声で鳴いたので、みんながビックリして大騒ぎになりました。

 そうやって、色々なことがありましたが、ようやく牧場に着きました。
そこは学校の校庭よりもずっと広い平地で、延々と青草が茂る広場でした。
そこでみんなでお弁当を食べました。
お母さんが作ってくれた美味しいお弁当食べ終わると、誰かがゴムの力で飛ぶ飛行機を持って来ていたので、それを飛ばしてみんなで追いかけました。
タヌ太はもう夢中です。楽しくて、楽しくて仕方有りません。
そんなお昼休みが終ると、今度は学校までの帰り道になりました。
タヌ太は相変わらず元気よく学校まで帰ったのですが、学校に着いて今度は一人で家に帰るときになって初めてお弁当箱を忘れてきてしまったことに気がつきました。
あの牧場で遊んでいて弁当箱をリュックに入れるのを忘れてしまったのです。
タヌ太は(どうしよう)と考えました。一人で取りに戻るのは少し怖いのです。
でもタヌ太は男の子です。そんな臆病なんて言ったら恥かしいと思いました。
それで勇気を出して、一人で牧場まで取りに戻る事にしました。

 タヌ太は友達とふざけてばかりいたので道の記憶にあまり自信がありませんでしたが、頑張って歩いて行くと 先生に地層のことを教えてもらったところに出ました。そして大きな牛が繋がれているところにも出ました。
それでタヌ太はだんだん自信が出てきました。
しかしその自信も曲がり角を右に曲がったあたりからだんだん怪しくなってきたのです。
あの右手に見える赤い屋根の家とか、左手に見える大きな煙突がある小屋とか 確かに見覚えがあるのですが、タヌ太の記憶では右左が逆だったような気がするのです。
でもそれは行きも帰りも同じ道を通ったから、勘違いしたのかもしれません。
もうしばらく歩いていくと、左側にお地蔵様がありました。
これはタヌ太は憶えていました。友達がふざけてお地蔵様の裏に回ったりしたからです。
それは行きの出来事で、その時はお地蔵様は右側にあったはずです。それなのにこのお地蔵様は左にあります。
不安になったタヌ太は、誰かに道を聞こうとしましたが、通りにも畑にも人の姿が見えません。まるで誰もいない世界に紛れこんでしまったかのようです。
タヌ太は怖くなってしまい、もう家に帰ろうと思いました。
そして、さっきショートカットした道まで戻りました。
実はタヌ太は遠足の時は太い道だけを歩いて突き当りを直角に右に曲がって牧場に行ったのですが、今回は斜めにショートカットする細い道があったので、少しでも早い方が良いと思って、その道を使ったのでした。
その道をまた使って広い道に出たタヌ太は、急に全てが元に戻ったような感じがしてホッとしたのですが、ふと(今来た細い道は、みんなと来た時には 使わなかったというより、無かったんじゃないか?)と そんな気がしました。
もし、その時には無かった道を使ってしまったから左右反対のところに出てしまったのなら、みんなと来た時と同じ道を使えば 左右正常な世界のままでいられるはずです。
そう考えて、タヌ太はもう一度だけ挑戦してみようと思いました。
そしてみんなで来た時と同じように太い道を突き当たりまで行って右に曲がり、そのまま歩いて行きました。
すると赤い屋根の家も、大きな煙突のある小屋も、お地蔵様も、みんなタヌ太の覚えている通りの側にありました。
そして牧場に着いて、お弁当を食べたところに行くと、お弁当箱もすぐに見つかりました。
(やったー!)と思い、タヌ太はお弁当箱をリュックに入れて、すぐに帰り道を歩き始めました。
今度は良く道を覚えたので自信マンマンです。
ただ、不思議な事に あのショートカットの細い道はなくなってしまい、タヌ太は普通に太い道を曲がって戻りました。

 タヌ太が自分の家が見えるところ来る頃は、もう薄暗くなっていました。
タヌ太の家はタヌ太が記憶している通り右側でした。
タヌ太は思わず涙が出そうになりました。
でもタヌ太は泣きません。タヌ太は一人で大冒険をして来た大人なのですから。
そこに近所の友達のコンちゃんが通り掛りました。
「何処に行っていたの?」と尋ねるコンちゃんに、忘れたお弁当箱を取りに行ったと話すと、「それなら僕も一緒に行ってあげたのに」と言われました。
それでタヌ太は(そうか、こんな時でも友達を誘ってもいいのか)と思い(失敗した)と思いましたが、でも今回はそれで良かったように思いました。
タヌ太が家の前で来ると、家からは美味しそうな匂いが漂って来ています。お母さんが晩御飯の仕度をしてくれているのです。
タヌ太はお母さんに今日の冒険の話をしようと「ただいまー」と元気良く家の中に入りましたが、いきなりお母さんに「タヌ太!こんな遅くまで何処で遊んでいたの?コンちゃんが遊びに来て、タヌ太は真っ直ぐに帰ったはずなのにって言ってたわよ」と叱られてしまいました。
タヌ太は余計な事を言うと、弁当箱を忘れたことを叱られるかもしれないと思い付いて
「うん、ちょっと遠いところに住んでいる友達の所に行ってきたんだ」と言いました。
お母さんは「それなら、ちゃんとことわってから行かなければだめじゃないの」とタヌ太のことを子供のように言いました。
(僕は、もうそんな子供じゃない。大冒険をしたんだから)と思い、多いに不満でしたが
「ごめんなさい。今度からはそうします」といつもより素直に謝りました。
タヌ太は、今日の大冒険のことはお母さんにも言わないでおこうと思いました。
あの不思議な道のことを話しても、きっと信用してくれないで「タヌ太はおっちょこちょいだから、勘違いしたんだろう」と言うに決まっていますから。
作品名:子狸タヌ太の大冒険 作家名:作田修