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切っ先

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「切っ先」


  1
 森と道路の境界線に、ぽつんと一つ電灯が見える、時計は午前を回りだした。
 そこに、男が、ぼけーと、つたっている。
 男の特徴は、おかっぱ頭に、パジャマ服。
 年は、実際の年齢より若く、幼く見える、
その、彼の年齢は、十八歳なのだが、見た目にしたら、中学生のようにしか見えない。
 この男がなぜ、こんな、夜更けにどういった目的でここにいるのかは、謎だがそれは、私が思うに、若さ故の、何か、なのかもしれない。
 青年は、思い付きのように語りだす。
 「なんだか寝付けなくて、こんな、なにもないこの町に一人、しかもこんな山の中・・・ハァ〜」
 などと、何かセリフを言わされているような、心もと無いような、何かを読ませられたような言葉を、呟くと、ちょうど何かの気配がする。
 青年は、背筋がぞっとするのを感じ、びくっとして、あたりを見回したが、近くを見回しても、何かしらの、存在を確認できない。
 青年は、意を決し、さらに、深い茂みへと入って行く。
 道なき道、茂みから、茂み草木をかき分け
進んで行くと、目の前は、とても広い、平野
が開けている。
 「何だ、あれは」
 青年が、平野に着いたのも、束の間、空から一瞬にして、彗星の如く入って来た光。
 青年は、一瞬の出来事に、言葉を失う。
 はっと我に返ると、下りた光の元へ、恐る恐る近づくと・・・・



   2
 「麗子は、もうだめ、がばがばだ」
 と何やら、怪しげに、下腹部をまさぐりながら、テレビのモニターに、夢中な男は、自分が編集した、ビデオに、ケチをつけた。
 「京子はマグロ、忍は、巨乳だけど、臭いこれ間違い無いっしょ」
 しかし、男は、器用なもので、リモコンを一向に話さず長時間片手で操作している。
 この男の一日の大半は、こうした、AVを
見ているか・・・・やっぱりAVを、見ているか、ああそうだ、とってつけるようだがパンクバンドが好きらしいよ、でね、十九歳無職。
 「ジィジジジ・・・」
 「んっ」
 天井の、ライトの調子が、おかしい。
 「くそまたかよ、しょうがねぇなぁ」
 部屋を見回し、電球の替えがないのが分かると・・・
 「母さん、おい、電気終わっちまったよ」
 「ああ、食器の、上の棚にあったかな」
 「たくっ、しようがねえなぁ」
 そう、男が、ぼやきながら階段を、かけ下り、台所に着くと近くに、無造作にある、椅子に手を伸ばし、手元に置く。
ぶっきらぼうに、物音をたてては、面倒くさそうに、あれでもないと、投げやりに探していると・・・数分。
 「あっこれっ、これじゃないか」
 新聞紙に、包まれたそれを、見つけると。
 「何でもかんでも包みがって」
 「あ〜、今なんつった」
 「地獄耳」
 「よいしょと、電球を、きゅっ、きゅ〜と・・・うぁ〜」
 と、電気の、接触の悪さか、何かは、解ら
ぬが、とにかく何かの、作用で関電。
 人間とは、不思議なもので、とっさに起きた、この体験が、なぜか、記憶に作用してたりなんかする。
 「遼子〜まだ手つかずだぁ〜」
 彼の場合は、AVのようだけど。



 

  3
 人は、突如として思いがけない、行動にでるものである・・・・。
 「ざぁざぁざっぱぁ」
 「おっ海かぁ」
 「ざぁざぁざっぱぁ」
 ただ、何となくTVのモニターから映る、自然の光景が、彼の心を惹きつけ、そして、
 大きなうねりとなって、点火を始める。
 「ふ〜ん、やっぱり広いな、一面青だ」
 「それにしても、誰だ、付けっぱなしにして・・・・待てよ」
 と、この瞬間、ほんの数秒の内に、男にとっての、「海」と言うキーワードが、この、男に、まるで万物をすべて包括したかの如く
それは、例えて言うなら、一種の悟りを、体得したと、言えよう。
 そしてその、衝撃は、男を大きく変えたのだった。
 「見える、見えるぞ、こっ、これだー」
 いてもたってもいられないほどの、衝動に駆られた男は、身支度も、ろくにせずに、一目散に、家の戸を開け、そのまま、玄関を抜けて行くと、男は、何かに解放されるように
スピードを、加速させて行く。
 人間で、あったことを、忘れていった。
 そう、彼は、「魚」に、なったのだった。
 「海、オレ帰る」
 「バタ、バタバタ」


   4
 「こっ、これは、・・・」
 と、おかっぱ、パジャマ服姿の、青年は、
呟いた。
 それも、そのはず、何の気なしに、田舎道を彷徨い、半ばキチガイじみた、恰好で、暗いまるで、未開の、ジャングルのように、森に入って行き、見つけたものは、そういった事情も重なって、でもあるが、青年が、今の今まで、見てきたものを、一変させるほどのデザインをした、代物を見つけたからだったのである。
 さらに、付け加えて言えば、この青年が、
と言うことを、注意しなくてはいけない。
 その品物は、順を、追って行くと、誰かが卑猥な、一言で、片付けてしまうが、それは、今は伏せておこう。
 ずいぶん説明が、長くなったがその品物と言うと、簡潔に、全身は、メタリックだが、
そのこともさる事ながら、妙に、懐かしさを感じさせる、何かがある。
 青年は、胸の高鳴りを、抑えきれず、その、メタリックな、物体に、触れた瞬間・・・・
 「ブッブッブブブーン」
 すさまじい機械音とともに、轟音。
 「ガガガガガッガッツ」
 青年は、その機械を、手なずけることに、
成功する。
 自分の、体以上あろうか、見たことも、聞いたこともない、自分の、背丈は優にある、
それは、それは、大きな、電ノコを!
 「こっ、これさえあればきっと、きっと世界さえ変えられる」
 これで、三者三様時、奇しくも、同じくして止まれなくなった。
 それが、どういうわけか、奇跡的な、めぐり合いを果たす。
 「止まらねえ、やべぇ、遼子〜オレ止まれねえ」
 「パクッパクパタパタパタ」
 「電ノコが、電ノコがー」
 「チャリン、チャリン」
 「どけ、どけー、遼子、きっと、お前はそこにいる、俺はそれを信じてる、行くぞ〜遼子〜」
 「コノ、カワヲ、クダレバ、ウミ、ウミ・・・オモイダスンダ、鰓呼吸、フウー」
 「ざっぱぁ〜」
 そして、三人は、出会う。
 一人は山を越え、もう、一人は野を駆け、
そして、最後の一人は、川を下り、ついに・・・・・
  (海岸にて)
 「何だ」
 「ちょっと、うあ、危ない、止まれな・・・い」
 「おっおい、なんだそのでっかい一物は」
 「と、止まった」
 「違うよ、これは、「ジャイガンティック
」世界を、変えるマシーンさ」
 「って聞いてねえよ、おい、て言うか、電ノコ?」
 「あっ、あんな所に、人が溺れてる!」
 「って、人の話あっ!」
 砂浜に、半ば、打ち上げられた男を、二人は、発見する。
 それを、見ていた、二人は互いにうなずき  
助けに向かい・・・・
 「よいしょ、よいしょ」
 「お、重てぇ」
 「この人、大丈夫かな」
 「こいつ、固まったまま、硬直しっぱなしだぜ」
 どうにか、男を二人は抱え、砂浜へ、なるべく海を、遠ざけるように、引上げたが・・・
 「ここまでくれば」
 「あのさ、どうでもいいけど」
 「えっなに」
 「こいつ気持ち悪くないか」
 「えっまあ」
作品名:切っ先 作家名:ハンソロ