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彼女はいつものシニカルな笑みを浮かべ

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自分の隠蔽スキルの下手さに絶望している俺を尻目に彼女は机に本を置き尋問モードだ。うーむ。まぁ隠すつもりは特には無かったんだが(あまりに下手だからもう少し上手くなってから見せよう、という乙女心のみ) ……何て言われるかな。

 「心当たりが無いなら手を出せばいいじゃない」

 「心当たりがあるから手を出すよ」
 
しょうがない。大人しく白状する事にした。ちょっとは格好つけたかったんだがなぁ。
まずは指南書を。そしてルービックキューブを机の上に置いた。

 「…………」

 「いやぁ、何だかお前を見てたらやってみたくなって。意外と難しいんだな。お前はスイスイやっちゃうから侮ってたわ」

沈黙が怖い。呆れられたかな。俺の予定ではこれをキッカケに教えて貰いながら…とか、そんな事を考えていたんだけど。

 「…………ばっかじゃないの」

 「え?」
 
言うなり、彼女は出ていってしまった。
聞こえたのは侮蔑の言葉。思わず追いかけ……

 「……でも、何て言うつもりだよ」
 
誤解だ? 何を誤解した。
そんなつもりじゃない? どんなつもりだった。
言葉が見つからない。何が彼女を不快にさせたのか分からない。
思考は拡散し収束しない。パズルが噛み合わず、ただぐるぐると回るだけ。

カシャン。

手からルービックキューブがこぼれ落ちた。その衝撃で、ピースが一つ、外れた。立方体が欠ける。慌てて拾うと黒いセンターキューブが見えた。

 「……」
 
もう一つ外す。更に一つ。
そうして剥き出しになったセンターキューブを眺める。

 「…………ダメ、だよな」
 
確証は無いが気力はある。年月も密度も無いが、自信はある。
伝えないといけない事がある。教えてやりたい事がある。
夢中でキューブを回す彼女が、どうしてそれに固執するのかは分からない。いや、彼女の事はまだ何も知らない。
だけど?まだ?だ。
もっと彼女の事を知りたい。近づきたい理解したい。
この感情がどこから生まれたのかは分からない。部室に足繁く通う理由も分からない。今こうして悩んでいるのも、何故だろうか。
けれど嘘ではない。
だから、俺は追いかけないといけない。
彼女を、こんなに小さくて情けない世界に、居させる訳にはいかないから。