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ひとりかくれんぼ/完結

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『…君が長瀬に同情してタイムアップまでそこにいるのは自由。かくれんぼのルールにあるんだけどね、見つからないで夕暮れがくれば、かくれんぼは中止。なぜなら、神隠しに合うから。君もそうなりたいの?』

 制限時間ルールはそこから来てるのか…!
 冷や汗が背中に流れた。妹を救えるかもしれない、という期待と、長瀬の末路への不安。助かる道を選びたい、もちろん。しかし、だけど…。

『助かりたいって思うことがエゴだって思うわけ?頭ん中、平和だね。じゃあずっと悩んでれば?あとに何ひとつ残らないし、君自体いなくなれば、しなかった後悔だってせずに済むかもしれないしね。それがいいかもね』
「今井」
『はい?』
「ありがとう」
『…包丁返してね、買って』
「おう」

 しない後悔より、する後悔か。何ひとつ残らないことより、何かひとつでも残したい。遠まわしに罵りつつそれでも背中を押すような今井の言葉は、俺にとっては十分だった。

「一応、電話つけっぱにしとくぞ」
『え、こっち来られるとか困るから無理。切るよ、さよなら』
「あっ…え?オイ!」

 静止を入れる間もなく、ブツっと電話は切られた。ひどい。表示された妹の待ち受け、その上には圏外の文字。一瞬だけつながったそれを不審に思いつつも、俺は決心をした。俺が鬼だ。ななを見つけて、そして必ず、このかくれんぼを終了させる。

 トン、トン、トン…
 トントントン…

 一升瓶を一本、しっかりと手に持ち、音のするクローゼットの扉をゆっくり、ゆっくりと開いた。