小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

ひとりかくれんぼ/完結

INDEX|2ページ/35ページ|

次のページ前のページ
 

5月23日 05:22(日)



★5月23日 05:22 (日)
暑い。暑いと怪談話が聞きたい。検索してはいけないワードをぐぐるのが一時期の趣味でした。くねくねが今のところ最強だったね。なつみSTEPはじわじわくる。あとは、あれ…うわー思い出したら怖い。あれよ、ひとりかくれんぼ。まあ、読みものとして面白い。去年のこの時期読んでたな。携帯からも探せば読めるから是非、通勤通学中周りに人がいる時に暑苦しい電車の中で読めばいいです。一人の時は激しくおすすめしません。ところで最近…


 ブログには、そんなことが書いてあった。検索してはいけないワードは、YOUTUBEで見たっけ。どれもネタバレを兼ねていたものだけど、大して怖くはなかった。しかし、その中にひとりかくれんぼなんてあったっけ、もう随分前のことだから、記憶が薄れているだけかもしれないが、どんな話だかは思い出せなかった。
 最初は面白おかしく映画の感想を書いていただけのこのブログは、管理人が飽きたのか、最近はこんな風にくだらないことばかり書いてある。もういい加減見に行くのをやめてもいいのだが、習慣というか惰性で携帯のブックマークをクリックしてしまう。いい加減、ブックマークを外さなければ、と思いつつ、Yahooを開いてそれを探した。ひとりかくれんぼ、すぐに出てきた。発祥は2ちゃんねるらしい。とりあえず一番上の「手順」を読んだ。


--手順--------

[用意する物]
・ぬいぐるみ(手と足があるもの)
・米(ぬいぐるみに詰められる程度)
・縫針
・糸(赤)
・刃物や錐など、鋭利な物
・塩水(コップ一杯ほど。天然塩がベター)

[事前準備]
1 ぬいぐるみの綿を全抜き、代わりに米を詰める
2 自分の爪を切り、かけらを入れて縫う
3 縫い終わったらそのまま糸をぬいぐるみに巻付け、ある程度巻いたらくくる
4 風呂桶に水を張る
5 隠れる場所に塩水を用意しておく

[実行手順]
1 ぬいぐるみに名前をつける(自分の名前以外なら何でも可)
2 3時になったら、『最初の鬼は○○(自分の名前)だから』とぬいぐるみに向って3回言う
3 風呂場に行き、ぬいぐるみを風呂桶に入れる
4 部屋に戻り、家中の明かりを消して、テレビをつける
5 目をつぶり10数えたら、用意した刃物を持って風呂場に行く
6 ぬいぐるみのとこへ来たら、『○○(ぬいぐるみの名前)見つけた』と言ってぬいぐるみを刺す
7 『次は○○(ぬいぐるみ)が鬼』と言いながら置く
8 置いたらすぐに逃げて隠れる

[終わり方]
1 塩水を半分口にふくみ、隠れてる場所から出て、ぬいぐるみを探す(途中で塩水吐かないよう注意)
2 ぬいぐるみを見つけたら、残りの塩水をぬいぐるみにかけて、口の中の塩水も吹き掛ける
3 『私の勝ち』と3回言う
4 ぬいぐるみは必ず捨てること(最終的に燃えるかたちで)

[注意点]
・家の外に出ない
・電気(明かり)は必ず消す
・隠れてる時は静かに
・同居人がいると、同居人に危害が及ぶという噂もあり


-----------------------


 この時点で十分怖い。幽霊的なものに関心は薄かったが、これなら十分に何かを呼び出せそうな気がした。恐ろしさと好奇心に苛まれながら、私は早速本スレ過去ログを読み漁った。
 >>1と名乗る人物が、ひとりかくれんぼの手順を書き込み、何人かの参加者が掲示板を使い実況していくというものだ。必ず、と言っていいほど、その空間には何かが起こった。何かの小説を読んでいるようだった。そこにあるのは確かな恐怖、そして、警告を呼びかける者たち。それと比例するように、好奇心は育っていく。

 ひとりかくれんぼには諸説あり、呪術だとか、黒魔法だとか、また、精神的パニックを呼び起こしているだけとの説。真意は分からないし、勿論、ここに書き込まれているものが全てだとは思わない。この実験参加者にしても嘘かもしれないし、時折出てくる画像もでっちあげという可能性もある。しかし、それがそうだと思うほど、自分自身がやってみたい、という衝動に駆られる。
 しかし、掲示板に書き込まれているものが全て事実だとすると、恐ろしい。中には狐に取り付かれた、という話もある。リスクを犯してまで、ひとりおにごっこをやろう、という勇気は私にはなかった。


「愛、ブログ見た?ひとりかくれんぼってヤツ」

 月曜日のお昼休み、昼食を広げているとサチが嬉しそうに私に聞いてきた。

「見たよ。暇だったから、言われたサイトも見てきた」
「マジでー!あたしも見たッ!つかあれマジ怖くね?電波途切れるとかあの人のコメ欄で誰か言ってたじゃん?私も探してる最中電波切れたの!超怖い」
「私は何もなかったなあ。普通に夜は怖かったけど」
「ひとりで読んだの?」
「まさか。家族がいる居間で読んだよ」
「だよねー。でもちょっと面白そう」

 サチがペットボトルを開けると、炭酸がプシュッと音を上げた。
 面白そうというサチの目は間違いなく、やりたい、と言っている。

「やったらいいじゃん?」
「やだよー。だって超怖そう。やってもいいけどー、何か起こんの嫌だし」
「でも何か起こんないとつまんないじゃん」
「じゃあ愛やってよ」
「何か起こると嫌だから嫌です」
「何だよーそれえ」

 まあ結局そういう訳だ。好奇心は恐怖に勝つが、実際のところ利害には勝てない。好奇心はあるが、何らかの被害が及ぶのが怖くて、実際には行動できずにいる。私もサチもそう。というか、まともな人間ならやらない。だって、リスクでかすぎる。

「でも、これガチで起こったのかな?」
「さあ、半分くらい釣りじゃないの」
「ですよねー…でも、本当のこともあるかもしれないよねー」
「…私、やんないからね?」

 サチにきっぱりと言う。やってよorやろうよ、の誘いを感じたのだ。サチは昔から少し強引なとこがあるから、こうして牽制をしておかないと駄目なのだ。
 しかし、てっきりむくれるかと思ったサチは、私の予想の反してにっこりと笑い、サンドイッチの殻をぐしゃぐしゃと片付けはじめた。

「あんさァ、1組のね、井坂サンって知ってる?」
「知らない」

 そう言うと、サチはさらににこにこと笑う。この笑みは、何か悪いことを考えている時の笑みだ。サチは楽しそうに言う。

「そっか、愛は知らないんだね。うちらの中学ではすっごい有名だったんだけどー、井坂サンってさー、超霊感あるんだって」
「なに、中2病?」
「さあ?マジであるって本人言ってるし、あるんじゃね?そこ子すっごいオカルトが好きでさー…ね?いわずもがな」

 いわずもがな、その通りに言わんとしている事は分かる。
 何だ、その井坂って子にやらせようって魂胆だが、なんだか居たたまれない。が、サチは急に席を立って、私の腕を引っ張った。

「えっ、今行くわけ!」
「絶対井坂サン喜ぶってー。こういう話好きだし。私と愛が待機係になってあげればいーじゃん?ね?」