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みとなんこ@紺
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グッバイ・アーリーバード

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0.






妙な間と、緊張感があった。


席の傍らに立つ車掌と、座席に相対して座る2人の男とがいる。
早く行ってくれないものか。
向かい合った席に腰掛ける男のうちの1人は、陽気に話しかけてくる車掌の世間話に適当に相槌を打ちながら心の中でそう願った。このままの状態が続けば、きっと望まない事が起こるのは確実だった為に。
もう1人は、表情の窺いにくい面に僅かな興味を浮かべて、その様子を黙って見ていただけ。
なのに、前者の心配を余所に、ソレは起こってしまった。
非常にお気軽な太い声が、容赦なく宣告を下す。

「そーいやボーズ、もーすぐイーストシティ着くぞー。すぐ司令部行くのか?」
「おやっさん・・・ッッ」

視界の端に少しばかり目を瞠った男の表情を捉えるが、今はそれどころじゃない。
――――が。


「いやー!びっくりしたねぇ、こーんな小さかった悪ガキがいっちょ前に少尉さんなんてなー!」


ちょっと待った、は間に合わなかった。
「ああああああ・・・・!」
バラされた・・・!
いや、昔馴染みの本人は、祝福してくれてるつもりなんだろうが。ばしばしと手加減無く背中を叩いてくる彼は、ベコリと地面にめり込まんばかりの勢いで凹んでいるこちらの様子に全く気付いてくれやしない。
そのうえ頑張れよーとか何とか言うだけ言って、さっさといってしまった。

あああ、本当に、何の為に今まで素性を伏せてたのか。

こういった駆け引きめいた事はそんなに得意ではない方なのに、今回はさりげなく頑張っていたはずなんだが。
ああ、げに恐るべきは、悪意のない第三者。
これだから、田舎は・・・。
都会の適度な距離感に多少慣れた身としては、久々に洗礼をくらった。

・・・伏せた視界に、対面に座る男の靴が目に入って、気分的に更に凹む。
決まり悪いというか何というか、取り合えずのろのろと顔を上げれば。
「・・・。」
「・・・・・・。」
・・・そりゃ笑われるよな、今のは。
のらりくらりとはぐらかしてたのに。
見物だったと思うよ、確かに。
だから。
「…笑うんだったらはっきり笑ってもらった方が良いんだけど」
そこまでが限界だったらしい。

静かな大笑い、なぞ器用なものを初めて見たよ畜生。


ああ、本当に。


気付いた時にはもう遅い。

ありふれた月並みな台詞だが、時として途轍もなく的を射る。
自分の行ける道がいくつかあって、いくつもの選択肢が目の前にあったとして、時にその中にはとんでもないものが混じっていたとしても。
選んだ後で、あ。と思ってもその時にはもう遅いんだ。

気付いた時にはもう遅い。
これもまた、ある種世にある真理とやらの1つだろ、とつくづく思い知ったのは、それでもだいぶ後になってからのことだったけれど。