タイムマシンの話 その2
「ついに完成したって、本当なのかい?」
「ああ、早かったな。嘘のはずがないだろう。ほら、これだよ」
「これが、その、タイムマシン?大きいし物々しいし、確かに所謂タイムマシンのイメージに近いけれど」
「本当だよ、私は成功したんだ! これを使えば過去にも、未来にだって行ける!」
「そうなのか…すごいな…まさか本当に完成させるなんて」
「半分は君のお陰だよ」
「そんな、僕は何も」
「君以外のみんなは全員私の研究を無駄だ無謀だと切り捨てて私から離れていってしまった。君だけだよ、ここまで付き合ってくれたのは。本当に感謝している」
「そんな、僕がきみを見捨てるわけがないだろう?」
「そうだな、君は私の親友だ」
「なあ、これ、本当に時空を越えられるのかい?」
「もちろんだとも」
「そうか…すごいな。なあ、ちょっと椅子を借りてもいいかな」
「どうぞ、そこにあるよ。でもどうしたんだい、疲れるほど慌てて来てくれたのかい?」
「まあそれもあるけど。ねえ、この話、僕以外にも知らせたのかな」
「まさか! 君に真っ先に伝えるに決まってるじゃないか!」
「起動は?」
「君を差し置いて私一人で試したりなんてしないよ」
「そうか、ありがとう。安心したよ」
「? 君、椅子を振り上げたりして、何をしているんだい?」
「何って、決まってるだろう。この機械を壊すんだよ」
「え?」
「まったく末恐ろしい。この時代にタイムマシンを完成させるだなんて、歴史が変わってしまうじゃないか。さすがに僕らの時代のものよりは図体も大きければ燃費も悪そうだけれど」
「困ったな、君が何を言っているのか解らないんだが……」
「何、簡単なことだよ。タイムマシンは今から数百年後に初めて完成するんだ。この時代にあっていいものじゃない。僕らの歴史が変わってしまうからね。だからこの機械は完膚なきまでに破壊されないといけないんだ」
「なっ、そんなことはさせない!」
「しなきゃならないんだよ、解らないかな。僕は未来から来たんだ。それこそタイムマシンというやつを使ってね」
「……………!」
「頭のいい君のことだ、もう解ったね? 僕の言うことも、僕がずっと君に付き合っていた理由も。僕らの歴史を変えないためにも、この機械と君には今この場で消えてもらう」
ある研究者が、世界を揺るがすほどの大発明をした。
しかし彼の名が歴史に残ることは決してなく、ある研究のために長い間研究室にこもり切りになっていたという彼は誰にも知られることなくひっそりとこの世から姿を消したのだった。
作品名:タイムマシンの話 その2 作家名:まじこ