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おやまのポンポコリン
おやまのポンポコリン
novelistID. 129
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彼岸(HIGAN)

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ずっとここで釣りをしている。

 昨日も一昨日も、いやもっと何年も前からだ。

 雪の日も、激しい嵐の日もここにいた。

 魚が釣れたことはない・・・。
 人と出会うこともない・・・。
 が、今日は違った。

 ふと気付くと背後に坊主が立っていた。

「迷っておられるな・・・」
 坊主がポツリと言った。

 確かにここ何年も眠っていない。
 それどころか、食事をした記憶すらなかった。
 よほどのバカでもない限り、それが尋常でないことは理解できた。
 だから・・・。

 「わかっている」
 と、俺は答えた。

 「ならば拙僧が送り届けてしんぜよう」
 坊主は懐から数珠を取り出すと、おもむろに経を読み始めた。

 だが、俺は思わず「無理!」と口走ってしまった。

 と、今まで穏やかだった坊主の表情が一変し、クワッと目を見開くと、
 「まだ、この世に未練を残すと申すか!」
 と、怒声をあげたのだった。

 俺は一瞬たじろいだものの、すぐに冷静さを取り戻し、
「いや、そういうわけではないのだが・・・」
 と、その理由を語った。

 つまり俺が言いたかったのは、自分自身も死んでいることに気付かぬ坊主では、他人を救うことは無理だということだった。

 案の定、それを聞いた坊主は大パニックを起こしていた。


        ――― おわり ―――