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涼の風吹く放課後 お試し版

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第五章/苟且のエスクペリエンス



 文化祭に続く月曜日は代休となり、学校は火曜日から始まったが、涼は欠席だった。
 先週末からドラマの撮影が入ったはずだったが、どんなスケジュールになっているのか詳しくはわからない。先週送った、演劇でもらった賞について報告したメールにも、返事がない。またメールを送るべきか、どんなメールを送るべきか、悩んでいるまま何も出来ず水曜、木曜と時間は過ぎて行く。
 涼のことを考えると、まず涼が最後に自分に触れた部分、つまり自分の唇に残った涼の唇の香り、感触を思い出しては紅潮感を覚える。次に、その後なにも会話を交わしていないことに忸怩たる思いをつのらせる。身勝手でバカなことをしてしまったような、しかし自分の気持ちに素直になれたことに後悔したくないような、そんな感情のループから抜け出せない。
 そう、今や自分が涼の虜になっていることは自分自身で否定もしようもなくなっていた。それは、金曜日に涼からのメールをもらうなり、学校を飛び出していた自分の姿が明白に示していた。

 涼が呼び出したのは、入学直後に一緒に眼鏡を買ったときの、その近所にある公園だった。公園への道の途中で、そのときに一緒に入ったタルト屋も見かけた。涼が呼び出した用件が、タルトをごちそうしてほしいとか、その程度の話だったらいいのだけれど。そんな訳はないだろうな、と自分でも思った。なにせ、あんなことをしてしまった後だ。メールには、「この公園に行く。」としか書かれていない。
 公園に着くと、ベンチの何カ所かに人が座っていたが、そこに涼の姿はなかった。一通りぐるっと回って、まだ来てないんだな、と思って、空いたベンチに座った。
 空を見上げると、街中の狭い空だが、まだ青く明るい時間だった。こんな風に澄んだ気持ちを持っていたなら、涼を傷つけずに済むんだろうに、俺の心には白く渦巻いた劣情が覆っていた。この気持ちを隠したまま、これ以上涼に会うのはよくないだろう。このあいだのキスのことを含め、どうやって説明しよう…。そう考え始めたときに、目の前の青空が突然暗転した。
「だ〜れだ?」
「……。涼。」
「ブッブー。正解は、秋月涼の生き別れの双子の姉、秋月涼子です。」
 俺に目隠ししていた両手を離して、涼は俺に微笑んでみせた。涼は、女の子の格好をして、頭には大きめのチューリップのような帽子を被っていた。
「やめようぜ、涼。」