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涼の風吹く放課後 お試し版

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第四章/敢然のリカバリー



 イトコの律子さんに事務所を紹介してもらい、見事に『アイドルデビュー』(ただし女性として)が決まった涼は、驚くほど順調に活動を展開していた。
 夏休みに入る前から、雑誌に新人アイドル紹介の記事が掲載されたり、少女向けファッション雑誌のモデルもつとめたりしていた。他のアイドルのイベントに登場して、ファンへの初めてのお披露目も済ませている。ネットの反応を見ても、『可愛かった』『歌もダンスも結構よかった』という好意的な反応が多かった。
 デビュー曲は年内の予定という話で、夏休みの間は結構びっしりとしたスケジュールでプロモーション映像やグラビアの撮影などに大変忙しく飛び回っていたらしい。夏休みの終わりごろには、連日涼の家に通って宿題を一緒に片づけてやった。涼には感謝されっ放しだったが、内心、随分久し振りに涼に会うことができて嬉しかったのは俺だ。
 事務所に所属してからというもの、放課後を涼と一緒に過ごすことはなくなったし、涼が『女性アイドル』としてデビュー間近だということは当然秘密なので、学校ではそういった話を決してしない。涼の時間があるときにはときどき電話をもらったり、メールを交換したりしていたくらいだ。

 二学期に入ると、うちの高校では早速、文化祭の準備が始まることになっていた。一年生は、クラス別に演劇の発表をすることになっている。俺には、少し心配なことがあった。
 クラスの中でも、涼はすっかりお姫様ポジションとして一方的に扱われている。本人には全くそのつもりがないのだけれど、告白してくる男子学生も後を絶たない中、自然とそういう対応になってしまうのは仕方がない。
 そんな空気のクラスに対して演劇をやれと言えば、涼がメインヒロインに祭り上げられる可能性が非常に高い。そうなってしまうと、今後の放課後の練習に涼がどこまで時間を割けるのかも問題だ。メインヒロインなのに、練習に滅多に参加できないようなら顰蹙ものだ。
 担任から、その日のホームルームで監督・脚本・配役を決めるという話があったので、昼休みに涼を捕まえて相談することにした。この際、普段は学校で話すことを避けている仕事のことも話さないといけないかもしれない。