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姫ノ宮

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「姫ノ宮」
 鍵をかけて開け閉め・・・
 「う〜んああ、実に退屈だ」
 男は、開け放しの窓にもたれている。 
 ぼんやりと外を、覗いていると・・・
 「あれは、向かいの人」
 粧し込んでいることを、確認すると打って変わり男の下心なのかつい、ふいに宥める       
 その視線に気づいても女は、少しも、気が動転する素振りも、見せないむしろ見られていることに、しごく当然と言った装いすら感じられるほど、どうどうとしたものだった。
 そこにポカンと口を、開けた男に女は、なれた素振りで、こう話しかけた。
 「お前さん」
 「わし?」 
 「そうおまえさん」
 男は、何かと、固唾を呑む。
 女は、わざとその行動を、楽しむように・・・
 「あんた以外に誰がおる」
 「で、俺に何ようかい?」
 「今日こうして、何もせずただお空を、見詰めはるなら、留守をたのめん」
 「留守ってお前さんの?」
 「嫌か」
 「ああええよ」
 そう言って男に、任をまかせると、女は、何所かへと行ってしまった、その様子を、男
は、ボケっと見つめていた。
 すると・・・
 「いけない、いけないでは、留守番」
 男は、女の家にはいる。
 「しかし物騒とはいえ」
 「バシッ」
 玄関の戸を、閉め。
 「女一人この家は、広いだろうに」
 「カラカラカラ」
 二階へ上がり、小窓を閉める。
 「ひょっとすると、未亡人かなぁ」
 窓や、戸の無い事、確認する。
 「いけない、うむいらぬ考えだ」
 ともらしつつ階段を、下りていると、あることに気付く。
 「妙だ、おかしい、あれは・・・・」
 ふと何かに駆られるよう駆け込む男。
 「あっあれは台所の方だ!」
 物音を嗅ぎつけ、恐る恐る近くより近くへと・・・・・
 「うあ〜」
 「どうしなさいました」
 「ああいやその、そうだ一体全体どこからお入りに?」
 「ええ裏口から」
 「裏口?」
 男は、暗い奥の部屋を、見つめるが、確認できない。
 「そんな所で、ぼさっとしないでおすわりになったら」
 「おっああ」
 「そんな事よりお入りになったら開けて下さいまし」
 「えっええ」
 男は、動揺を隠しきれぬまま、始めから、玄関へと進み戸の錠を、外し、開ける、すると・・・・
 「閉めてくださいまし」
 男は、訳が解らず、怒りなのか、悲しみなのか見当がつかずただ、瞳を濡らしている、そこに女は、優しく、唇を、重ね
 「野暮ですよ」 



 
 
作品名:姫ノ宮 作家名:ハンソロ