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運命の糸は人知れず靡く

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「運命の糸は人知れず靡く」

 私は偶に、人の後ろから垂れる、赤い糸を
手繰り、手探りに恐る恐る近づき、人の気配を感じると隅に隠れ、赤い糸の持ち主を見詰めていた。
 私はとても臆病で、凄くへそ曲がり。
 ふと、直感的に物事の先がまるでお話の様に読めたり動物的な嗅覚が作用してか、好きな人が持つ匂いを当てられたりする。
 それから、私はとても惚れ体質、要は浮気症なので常にレーダーは感度が良好。
 だけどこの人とは、両想いに成れると思っても私は、その場を後にします。
 何故か?きっと何も出来ない事が分かっているから。
 その事情を、居合わせた人に言わせれば勿体無い何をカッコつけているんだ、だって。
 だけどそれは御門違い。
 そういった誰もが、理想だけで、実態を伴った愛として結実した人間を私は知らない。
 私はこの世の中の有りと有らゆるものが大好きだ。
 しかし、それと同時に、いやそれ以上に私は深い憎しみに支配されている。
 だから、私を覆うこの赤い糸は、不必要だと手当たり次第切っていた。
 聞くに堪えない?御免ね、親不幸で、でもね、これ毎日切っても減らないんだ。
 だって運命なんだもん。
 私は毎日とても無駄な事をしている。
 それが解っていても、それが生きる者の宿命だと自分に言い聞かせている。