小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

漆黒のヴァルキュリア

INDEX|18ページ/45ページ|

次のページ前のページ
 

第二章 恵那の面影 3



 辺りが夕暮れのオレンジに染まる頃。
 俺は――
「……参り……くっ……ました……」
 ――屈辱の涙を男泣きに流していた。
 五戦全敗。三敗した時点で勝負は決まっていたのだが、一勝でもしなきゃ、俺の男が廃る――なんぞと色気を出したのがいけなかった。
 どう考えても、目の前のガキはタダもんじゃない。囲碁にしろ将棋にしろ、異常ともいえる強さを見せた。しかも、先読みが半端じゃない。五手十手じゃ利かない。百手先だって読んでいるのかも知れない。
 俺は頬を掻きながら、目の前のガキ――戸川紳太を見つめた。こいつのナリはこれから先、ずっと変わらない。ガキのまま経験だけを蓄積し、神々の黄昏を待つことになる。しかし、ガキの容姿ってだけで、それは相手を油断させる有用なファクターになりうる。それだけでもコイツは充分に使える。と、そう思った。
「分かった。認めよう、戸川紳太。俺が後見人になってやる。可能な限り、お前の味方をしてやるよ」
 ――それが、エインヘルヤルとしての、俺の最後の仕事になるだろうからな――
「その言葉にウソ……」
「を言っても、俺に益はないのさ。分からんお前でもないだろ?」
「……ですね」
 紳太はそう言って、ニヤリと微笑った。
「だが、まぁもう少し待て。もう一人連れてかなきゃならんのでな。それまでは、俺の傍で参謀役でもしててくれ。仲良くやろうぜ?」
「じゃあ、まずは色々教えてください。エインヘルヤルとか、よく知らないんですよね」
 俺の言葉に、紳太は指折り聞きたい事を数えている。
 さすがは天才児の優等生。知識欲が半端じゃない。が、
「その前に、俺が聞きたい。お前が見た事だ。どんな状態で、エナが……まぁいい、見たままを聞かせてくれ」



 金色から黒髪へ。
 衣装までが、白と紅へ。
 そして――
「……カスガ……エナ……」
 俺は、もう一度その名を口にした。
 刹那、
 蘇る、
 記憶の断片。

 ――コラ響七郎! みんなと仲良くしなくちゃダメでしょ! ――

 ――おれにも剣術教えてくれよ――

 ――ふ〜ん、響七郎は科学者になりたいんだ――

 ――おれ、恵那をお嫁さんにするんだ! ――

 ――ごめんね、って、恵那は謝ってたよ。響七郎――

 ――ウソだ! 恵那が死んだりするもんか! ――

 ――恵那、俺、工兵になったよ。科学者はムリだったけど、軍ならただで化学の勉強できるからさ――

 そして、

 鮮烈に脳裏を満たす、

 最期の記憶。