砂漠の蜂蜜
二宮「しかし香取さん、なんでそこまで」
香取「砂漠の蜂蜜って知ってるか?」
二宮「はちみつ?」
香取「ああ、先月現地調査をしてきた」
○回想・砂漠・全景
広大な砂漠が広がっている。
○回想・同・テント・中
香取、通訳、数人の現地の人々
香取「なんて広々とした景色なんだ。このままにしている方がいい気さえしますね」
通訳、香取の言葉を訳している。
1人の女性Aが話し出す。
通訳、頷きながら聞いている。
通訳「今日は天気がいいから視界も利く。しかし1度砂嵐が起きれば全く場所も方向も見失ってしまう。先月は彼女の叔父さんが急病になったが結局場所の連絡が間に合わずに亡くなった」
女性Aが再度話し出す。
通訳がメモを取っている。
通訳「彼女は実は先生です。現在学校が年数回開校されますが、どこでいつ開校されるのか子供達は知ることができません。ただ待っていて、たまたま先生と会えると学校が始まります。この連絡ができるようになると子供達も集まり、勉強をすることもできるようになります」
女性A、奥に入り、瓶を持ってきて香取に渡す。
通訳「どうぞ、これは蜂蜜です」
香取「蜂蜜?」
通訳「そうです。ご覧の通り砂漠には花はありません、蜂蜜を取ることができるのはオアシスだけです。そのため非常に貴重なものです。これを渡すという事は通信が繋がる事をそれほど願っている証拠なのです」
香取、蜂蜜瓶をじっと眺める。
○二宮家・居間・中
香取、二宮、向かい合って座っている。
香取「日本単独でやろうとすれば何年掛かるかわからない。だからと言ってサウジの手助けをして結局向こうが資源独占じゃあ割に合わない。国にも得手、不得手がある。日本の得意分野で居座ることは悪くない」
香取、テーブルの上のお茶を飲む
香取「ただ何故この話しをお前に持ってきたかというと、俺は女房に離婚されて1人、お前も残念だが奥さんに死なれて1人になった。これは家族がいるとちょっと危なくて乗れない。サウジからは明らかに嫌われるからな。俺もお前も」
二宮「俺はいいけど…」
香取「1度位好きなように仕事したくなったのかな。南米での生活も悪くない。それに案外騙すのは大きい方が楽だ。どちらの国も威信がかかっているから下手なことはできないはずだ」