ストイコビッチのキックフェイント(笠井りょう)
さすがだね。「外の」じゃなくて「外からの」と助詞を補って、語尾を「んです」とやわらかくするという気配り。日本語の命脈は語尾にあるのだ。「あなた、おビール、お飲みですか」じゃ敬いの気持ちがぜんぜん表現されなくて、せっかくのビールが不味くなる。そうじゃなくて、やっぱり「ビール、飲みますか、あなた」としないとね。ほら。「あなた」の居場所ですべてが変わる。「やっちゃん」ならそんな言い方もしない。
作品名:ストイコビッチのキックフェイント(笠井りょう) 作家名:早稲田文芸会