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分別(三題噺)

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キーワード「雪 ゴミ置き場 あの人」

「ふぅ、終った…意外と時間かかっちゃった。間に合わないかと思ってヒヤヒヤしたわ。」
私は、ゴミ置き場に最後のゴミ袋を置いてひとりごちた。

それにしても最近の自治体指定のゴミ袋って、どうしてこんなに小さいんだろう。おかげですごい数の袋になっちゃったし…“分別する”のにもすごく時間かかっちゃったじゃない。

「冷たっ?!」
幾つにもなったゴミ袋を眺めて下を向いていると、私の首筋に冷たいものが落ちてきた。見上げると、例年より少し早く初雪がふわふわと風に乗って舞っている。

やがて、時期の早いそれは、ゴミ袋の名前の上に乗るとすぐに解けて水性マジックの文字を消す。私の全てを詰め込んだそれから、私の名前を…私の存在を消し去っていく。

−さよなら…愛しい人。世界で一番愛してた。−
私は小さな声でそう告げると、自分の部屋に戻っていった。

そして…私は自分の部屋の窓から私の全て−思い出の品と共に幾つにも“分別した”あの人自身−を乗せて走っていくごみ収拾車をぼんやりと眺めた。
「ホントに…全部終ったわ。」

一人きりの今夜は、ぐっと冷える夜になりそうだ…

                        −完−

作品名:分別(三題噺) 作家名:神山 備