ついのべ比較「ルナティック」
ルナティック。満月の夜はご用心。月の光は人を狂わせるらしいから。
だとしたら。
私は自転車をこぎながら苦笑する。
だとしたら、月の光の届かない新月の夜は、人は一番マトモなはず。それなのに、
こんな時間に髪も乾かさずに自転車をこいでいる私は、本当に狂っているのかもし
れない。
きっと試されただけ。今から来いだなんて。それでも私はあなたの口調に何かを
感じた。弱音を吐くあなたじゃないのに、いつもと違うものを。
会いたければあなたが来ればいいじゃない。そう軽口を返せば良かったのに、ど
うしてできなかったんだろう。恋愛はパワーゲームじゃない、ううん、負けっぱな
しでもいい。きっと私のほうが会いたいから、会いに行くだけ。
会ってどうするの。
会ってどうなるの。
どうなってもかまわない。
もうとっくに終電は出てしまった。
とにかく駅前まで行こう。そうしたらタクシーを拾えるかもしれない。私は自転
車をこぎ続ける。
ルナティック。月のない夜、私を狂わせるのは、あなたへの想い。
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ルナティック。月の光が人を狂わせるなら、新月の日は一番冷静なはず。どうかし
てるよ、あなた。こんな夜中に今から来いだなんて。どうかしてるよ、私。それを
真に受けるなんて。どうするの。どうなるの。どうなってもかまわない。月の光の
代わりに、私たちを狂わせるものは、何?
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作品名:ついのべ比較「ルナティック」 作家名:よしのちほ