イグルーでひとりきり
かじかんで凍りつく指先が、あなたにふれなくてよかった。
太陽のあたらない真っ暗闇で、凍傷の言葉をかかえながらあたたかいふりをする。
あなたがどこかで生きているとおもえば、氷点下でも笑っていられるのだ。
何日も休むことをやめた脳は、熱っぽく幻を生み出して紛いもののやさしさに酔いしれる。
氷を積み上げただけの部屋には、だっていくら探したって嘘はなかった。
だれか、いないか。空っぽの空間を満たしてくれるものはないか。
そうしてつくられる幻は、いつだってあなたの姿なのだ。
作品名:イグルーでひとりきり 作家名:東雲せぞん