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永遠(とわ)のほとり

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第3章 誓い


 休暇願いは許可されたものの、ジムサの連れが誰だか知ると同僚はいっせいに顔を見合わせた。
「大丈夫かなぁ……」
「何がですかっ」
 むっとして噛みつくように訊き返すと、年上の同僚たちは気まずそうに視線を交わし、頷きあった。
「……だってさ。その娘って、例のほら、カルジャッハの娘なんだろ」
「メイシャは悪いことなんか何もしてませんよ!」
「そりゃそうだけどさ……。でも出世に響くぞ、きっと」
 ジムサはふんと鼻息をついた。
「さいわい響くほど偉くありませんから、うちは」
「そうは言ってもなぁ」
「ま、いいんじゃないの。その娘にしたって、上流貴族の側女になるよりか、生臭い政争に巻き込まれずにすむだろ」
「それはそうかもな」
「そうだな」
 難しそうな顔で頷いたかと思うと、打って変わってニヤニヤしながらジムサの肩をぐいと引き寄せる。
「あのな、ジムサ。確かに見習いは正式な巫女と違って世俗身分も同様だ。花嫁修行みたいなもんだし、恋愛は御法度というわけじゃない。しかし、越えてはならん一線というのもちゃーんとあるんだぞ」
「はぁ?」
 いぶかしげにジムサは首を傾げた。いったい何を言い出すんだ今度は。
「まず、太陽が地平線に沈むまでに彼女を神殿に送り届けたうえで詰め所に戻ってこなかったら、鞭打ち三十回」
「知ってますよ、それくらい」
「それから、たとえ見習いでも還俗前の巫女さんに手ェ出したら、鞭打ち五十回に加えて荒地(ダシュト)に三日間追放だからな」
「水は一日分だけだぞー」
「かなりの確率で死んじゃうぞー」
 にやにやしている同僚たちに、ジムサは怒鳴った。
「わかってますよっ。馬で湖に連れてくだけなんですからっ」
「サイラム湖は一周すると二日はかかるぞ」
「誰が一周するなんて言った!?」
 無責任にはやし立てる声から逃れるようにジムサはそそくさと詰め所を出た。
 ジムサが休み時間などに見習い巫女のメイシャとお喋りをしていることは、いつのまにか衛兵仲間に知れ渡ってしまっていた。
 別にやましいことをしているわけではなく、仕事をサボって会っているわけでもない。昼休みや仕事が終わってからちょっと立ち話をするだけだ。聞かれてまずい話でもなし、こそこそ隠れることもない。
 それに、神々に一生を捧げる誓いをたてた巫女や神官でもなければ、サイラムはもともと恋愛にはおおらかな土地柄なのだ。
作品名:永遠(とわ)のほとり 作家名:彩里美月