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根岸 郁男
根岸 郁男
novelistID. 64631
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徳冶朗と亜理須

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徳冶朗と亜理須


【登場人物】
   
   磐田 徳冶朗(88)  主人公 元自衛隊 現在年金暮らし
   磐田 登紀子(86)  徳冶朗の妻 
磐田 雄一郎(35) 徳冶朗の 長男 大阪で働いている
   磐田 静香(30)  徳冶朗の長女 東京在住 独身 TV関係の仕事に従事

   森野 亜理須(22) 互助会の女性。大阪府池田市の出身 母が大阪にいる。長男夫婦が母の面倒をみている
   朋坂 奈津実(26) 雄一郎の子を妊娠したと主張する女性
   皹野 亨  (35) 雄一郎の会社の同僚
   山村(48)     雄一郎の会社の上司
   磐田 五十八(82) 徳冶朗の弟 妻に先立たれ現在は愛犬と一緒に一人暮らし
   遠山(36)     池田市警察署 捜査課 刑事               
   笹西 (56)    池田市警察署 交通捜査課 課長
   穂積(58)     池田市内 産婦人科医師
   年配の女性(60)  朋坂奈津実の隣に住む住人
   レジ係(26)    コンビニの従業員 男性
   タクシーの運転手(60)
   鑑識課 係員
 銀行窓口の女性(27)


○大阪湾岸道路 深夜零時過ぎ
   海面を激しく叩きつける雨。
   ポートアイランド近く、大阪湾の上方を走る湾岸道路。
   激しい雨で霞んでいる。
   暗闇にヘッドライトが浮き上がり、一台の白い乗用車が走り去っていく。  
   跡を追うように黒い乗用車も走り去っていく。(俯瞰でみると走行車線を一定の距離を保ちながら走行している二台の乗用車)
   雨水を掻き分け水飛沫を上げる黒い乗用車のタイヤ。
   後を走る黒い乗用車がヘッドライトを上向きにし、パッシングする。
   アクセルを踏み込み急速にスピードを上げ追い越し車線を走り、白い乗用車を追い抜くと前に割り込んで入る。
   急ブレーキを踏む白い乗用車、ぶつかりそうになる瞬間ハンドルを切って追い越し車線に移る。
   黒い乗用車、アクセルを踏み、白い乗用車の前に割り込む。
   ブレーキを踏む白い乗用車。追い越し車線と走行車線を交互に走る白と黒の乗用車。
   追い越しを駆ける黒い乗用車は追い越しをかけるたびにライトを上向きにして激しいパッシングをする。
   追い越しを駆ける黒い乗用車、無理やりぶつかるように白い乗用車の前に割り込む。
   急ブレーキと急ハンドルを切る白い乗用車、車がスピンして半回転し、ガードレールにぶつかりながら本線用LED道路照明に激突し、停車する。
   前を走行していた黒い乗用車、停車し、黒いマウンテンパーカを着た男性が降りてくる。
   男はサングラス、マスク、ニット帽を被っている。
   男は白い乗用車の前に来るとフロントガラスから中を覗き込む。
   叩きつける雨と動きの早いワイパーで中が確認できない。
   男は素手でワイパーを止め、中を覗き込む。
   エアバックが破損し頭部から血を流しハンドルから少しずれて横に蹲っている男性を確認する。無表情のサングラスの男の顔。
   男は車に戻り闇の彼方に過ぎ去っていく。
   激突し少し折れ曲がった本線用LED道路照明の灯りが点滅している。
   ハザードランプが点滅したままの白い乗用車。
   ルーフに叩きつけるような激しい雨。

○ 磐田 徳冶朗の自宅 居間 (午前)
   暖かい日差しが窓ガラス越に入る居間。
   食卓テーブルと併設されたキッチン。
   徳治朗(88)がテーブルの上に昔の古い写真を広げてみている。
   登紀子(86)徳次郎を見ながらお茶を入れている。
   急須で湯のみ茶碗にお茶を注いでいる。
   突然、右手が震えだし急須を落とす。
   徳冶朗、登紀子をみて、
徳治朗「おい大丈夫か、」
   徳治朗、登紀子に声をかける。
登紀子「(額に手を当て)大丈夫よ、ちょっと眩暈がしただけ。なにか悪いことがおきなきゃいいけど。作り直すわ」
   登紀子、落とした急須を拾う。
徳治朗「(ニコニコ微笑みながら)よかった。急須が割れていなくて」
登紀子「なによ、おじいさん。私のことを心配してくれたのじゃないの。普通は急須の事なんか心配をしないで私こと案ずるのが普通じゃない」
徳治朗「ちょっとジョークだよ。それよりもこの写真をみてごらんよ」
登紀子、お茶を入れ直して徳次朗の脇に湯のみ茶碗を置き、隣の椅子に座る。
登紀子、徳冶朗が手にしている写真を見る。
    (四人が旅先で撮った写真。)中央に徳じ冶朗と登紀子。両脇に雄一郎(長男)と静香(長女)。
登紀子「あら、十年位前の写真ね」
徳治朗「この写真が家族全員で撮った最後の写真だよ」
徳治朗「雄一朗や静香から全然音沙汰ないな」
登紀子「あなたが電話しないからよ。旅館で出した食事が口にあわない。こんなの食えるか、雄一朗に怒ったじゃないの。帰りの車のなかで全員終始無言だったじゃないの。息が詰まったわ」
徳治朗「昔の話じゃないか」
登紀子「いいえ、昔の話だから、もういいじゃないか、ではありません。あなたから電話してみるべきよ」
徳治朗「そうかな」
徳次郎、次の写真を手にする。
雄一朗の会社の慰安旅行、ホテルでの宴会時の写真。
徳治朗「これが、二、三年まえに雄一朗が送ってきてくれた写真。会社の慰安旅行とだけ書いてあった」
登紀子「知ってるわよ。でも…おとうさんお母さん元気ですか。僕は元気です。って、まるで小学生がかいたような文章だったわ。手紙よりも声が聞きたいよね」
徳治朗「彼女できたら真っ先に父さんに紹介するよ、って電話はあるんだけど、できたって電話はないね。(写真を指差し)ほら、雄一朗の隣でピースサインをしている女性(朋坂奈津実(26)。美人じゃないか。」
登紀子「でもなんか化粧濃いし、わたしはタイプじゃないわ」
徳治朗「おまえが結婚するんじゃないし」
   徳治朗、まじまじともう一度写真を見る。
   まじめな顔の雄一朗の隣でピースサインをしている女性。
   雄一朗を挟んで両側でピースしている男女。(男性は皹野 亨(38))
   徳治朗「たぶん友達だろう。」
   徳治朗、ごくりとお茶を呑む。
徳治朗「そうだ、きょうの午後、互助会の森野亜理須さんが撮影会で撮影した写真を持ってくる日だ」
登紀子「互助会の亜理栖?」
   登紀子が聞く。
徳治朗「互助会の森野さんだよ。(強調して)森野亜理栖」
登紀子「あー、あの若いお嬢さん。芸名みたいな名前の大阪弁の方ね。あなたが雄一朗のお嫁さんにしたいって言ってた人ね。ね、きょう来たらおつきあいしている人がいるかどうか聞いてみない」
徳治朗「いない、といったら雄一郎を紹介するつもりなのか。若すぎるよ。十歳以上も離れているんだよ」
登紀子「いいじゃのいの、今は年の差結婚が流行っているから」
徳次郎が再びお茶を飲む。
徳治朗「ぬるいな」
登紀子「あなたがさっさと飲まないからよ」

○ 徳治朗の家 玄関・庭
   徳治朗の家の前に中古らしい3ナンバーの乗用車が停まっている。(徳冶朗の車)
作品名:徳冶朗と亜理須 作家名:根岸 郁男