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『掌に絆つないで』第二章

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Act.09 [コエンマ] 2019.6.19更新


魔界に訪れた新月の夜。それは霊界案内人たちの恐怖心をあおるには十分すぎた。
コエンマは二人の案内人に両腕を拘束されたような格好で、闇夜を進んだ。
「ぼたん、ひなげし……、もう少し離れんか」
「だってぇ~…コエンマ様。ものっすごく暗いですよ!」
「う~怖い…」
「まったく、お前たちは…」
そうため息をつくコエンマも、半ば萎縮していた。魔界独特のおぞましい雰囲気、しかも新月の夜道を歩く羽目になるとは、計算外。霊界を統治する彼でも、弱肉強食の魔界の摂理には対応し難かった。
早く幽助と合流しなくては…身が持たん。あと、少しだ。
かつて雷禅が居住していた塔が見え始める。それに安堵の吐息をもらそうとした瞬間、コエンマたちは突如現れた妖怪たちに取り囲まれてしまった。
「貴様らは誰だ」
威嚇する者たちの姿には、見覚えがあった。雷禅の配下たちだ。となると、S級妖怪の集団。その結論が、コエンマに説明の余裕を無くさせた。
誰、という問いに即答できず、固唾が喉を行き過ぎる。その沈黙が、さらに緊張を高めてしまった。
「侵入者となれば、容赦せんぞ」
「……いや、待て、ワシらは……」
「よせ、東王。彼らは幽助さんの客人だ」
ふと、あとから現れた一人が体格のいい男をなだめた。そして、コエンマの前へ進み出る。
「失礼しました、コエンマさん。覚えておいでですか、北神です」
礼儀正しくお辞儀をする彼を前に、コエンマはようやく安堵の吐息をつけた。
「……ああ、覚えておるぞ、北神。ふう、助かった。誤解されて幽助に会う前に死ぬかと思ったぞ」
コエンマは以前から北神と面識があった。今も幽助を雷禅の息子として崇め、魔界にいるときは各所で力を貸してくれているようだ。すでに元国王の息子だから、という理由ではなく、幽助自身に惚れ込んで世話を焼いているという風だ。幽助のカリスマ性は、魔界の地でも変わらない。
「荒くれ者ばかりの場所ですので、非礼をお許しください」
「こちらこそ、突然訪ねて来たのでな……。幽助はおるか?」
「それが……」
数時間前の出来事を北神の口から知らされ、コエンマとぼたんは思わず甲高い声を上げた。
雪菜が幽助を迎えに来て飛影を探しに行った、というだけでも驚かずにはいられないというのに、それだけではない。
「雪菜という方は兄である飛影に会わせてくれと、幽助さんに頼んでいました」
この報告に、二人は思わず声を漏らしたのだった。
「雪菜ちゃん…いつから飛影がお兄さんだって気づいてたんだい?」
「なぜ今頃、兄を……いや、今はそれどころじゃない。この際一石二鳥と考えるか。ワシらは飛影を探しに来たのだ。北神、飛影の居場所はわかるか?」
「ええ、躯の移動要塞の場所なら、だいたいつかめています。あなたたちだけでは大変でしょう、お送りしますよ」
「すまんな、頼む」