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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
novelistID. 60014
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L K 3 「フェニックス」

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第一話 開戦の日



 ここはアリゾナ州フェニックス。私はスコッツデール通りにある、世界的半導体企業インフォン社のPTC(プロセス・テクノロジー・センター)で働いてた。結構な高給でいい職場なの。
 私は毎日コンピューター相手に仕事をする。人とのコミュニケーションはハッキリ言って苦手だわ。皆が私のことオタクって思ってる。・・・実際そうなんだけど。ランチも一人だし、コーヒーブレイクもしない。て言うか、コーヒー飲むとお腹痛くなっちゃうの。でもコーラは最強ね。眠くなっても糖分で頭が冴えるし、炭酸の刺激で目も覚める。でもお腹周りのプニュプニュは気になってるわ。運動も少しくらいしないと、とは思ってる。
 ある日の午後、プログラミングの仕事中に、私のPCがフリーズしてしまった。まあ、そんなことぐらいよく起こるのよ。でもその時はいつもと様子が違っていた。オフィスのPCすべてが固まって操作不能に。同僚達も皆、お手上げ状態だ。管理システムのマザー・サーバーに問いかけても、返答はなかった。この時点で、厄介なことが起こっていると解かっていたわ。
 やがて照明も消えた。送電所も被害に遭っているのかもしれない。このビルのバックアップ電源は、自家発電で自動復帰するようプログラムしたのは私なのに、うまく機能していない。皆がチラチラとこっちを見る視線が痛いわ。でも誰かが手動で自家発電を開始してくれたみたい。暫くして明かりが戻った。でもテレビを点けても、コンテンツ配信出来ている局はひとつもない。どうやら広範囲に渡って、すべてのコンピューターがダウンしたようね。

「リズ(エリザベスの愛称)。君の電話は使えるか?」
 マネージャー(上司)のケニー・ライアンが苛立ちながら私に聞いている。私はハンドバッグに入れていた自分のパーソナルデバイスを確認したけど、受信状況どころか、どういうわけか電源さえ入れられなかった。
 私は首を振ると、ケニーは眉間にしわを寄せ、机の上に腰掛けて、私のデバイスの画面を覗き込んだ。そして、慌しく動き回る同僚達を見ながら、
「一体、何が起こったって言うんだ」
「トラブルはどの範囲まで広がっているのかしら?」
「窓から外も見ても、動いているビークル(車)など1台もなかった。すべて止まってしまっているようだ」