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思い切って三枝に聞いてみようと美那子は思った。静子に少し話したいことがあるから待っていてと断って二人だけになった。

「三枝さん、お母さんが離婚した理由って何だったと思われますか？」

「それは解らないよ。何か夫婦喧嘩でもあったんじゃないの？」

「喧嘩で離婚なんてしないですよ女は」

「そう言うものか、大人になったね美那子ちゃんは」

「お互いの浮気が解ってしまったというのが聞かされた理由でしたが、実は他にもっと違う問題があったのではないかと考えています。お母さんはお父さんの浮気なんて許すと思うからです」

「美那子ちゃんはお母さんの浮気は許せるの？」

「いいえ、どんな理由があろうとも浮気はダメです。私はその事よりももっと大きなことが知りたいんです」

「大きなこと？浮気をするよりも許せないようなことって何だろう？」

三枝は美那子が聞きたいことが何であるのか解ってきた。返事に迷う。離婚した今なら話してもいいのではないかと思ったからだ。

「お兄ちゃんもお母さんも知っていて話してくれないからずっと考えることになったんです。私は誰が何と言おうがお母さんの子供だし嫌いになったりすることはないのに内緒にしていることが悲しいんです」

「う～ん、知っていいことと知らないでいた方がいいこともあると思うけど、美那子ちゃんがそこまで悩むのだったらお母さんに聞いてみることが良いと思うよ。おれから話せるようなことはないよ。お母さんとは同級生で昔は好きだったという事ぐらいかな」

「私の本当のお父さんじゃないの？」

美那子は直球を投げつけた。

「ええ？おれが美那子ちゃんのお父さん？どうしてそう思うの？」

「私は母とも父とも似ていないし、お父さんだって子供の頃は疑わなかったけど今になって確信があってお母さんに聞いたと思うの。その返事で離婚に至ったという事は隠せない事実だと思えるの。どうしてお母さんと不倫したのか聞きたい」

「お母さんとは不倫なんかしてないよ。確かに今でも綺麗だしおれが独身なら結婚を申し込みたいって思う。周りからの言葉で決め付けるんじゃなく、お母さんからきちんと聞いて判断すべきだよ」

「わかりました。今日三枝さんにこんな話をしたという事はお母さんに伝えます。それは許してください。では失礼します、静子を待たせるといけないから」

三枝は来るところまで来たと感じた。
美樹は美那子から問われて何と返事をするのか気になったが、今更何を言っても事態が変化することはないとあきらめるしかなかった。

秀一郎に送られて帰ってきた美樹は飲み直す前に入浴しようと浴室に入った。