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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「美那子」 信頼 一話

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「静子ちゃんは秀一郎のことが好きだったの。そう、知らなかったわ」

「それよりねお母さん、聞きたい事って言うのはお母さんと三枝さんとのことなの。お兄ちゃんも話していたけど、過去に深い関係にあったんじゃないの?」

美樹は聞かれるだろうと思いながら目の当たりにすると言葉が出なくなっていた。
言葉を選びながら慎重に返事をした。

「お母さんは高校時代三枝くんから交際を求められたことがあったのは事実よ。その時はあなたにも話したように先輩で好きな人がいたから気にも留めなかった。結婚して秀一郎が生まれた後ぐらいだったと思うけど同窓会があって再会したの。
懐かしさで遅くまでお酒を飲んで話はしたけど、そこまでの関係よ」

「お母さんはお酒が入ると自分を忘れるから、泥酔したあと三枝さんに抱かれたという事も考えられるわ。知らなかっただけで本当はそれが私の出産に関係したんじゃないの?調べればわかることだから嘘は言わないで欲しい」

「三枝くんに抱かれたことが記憶にないなんて考えられないことだわ。睡眠薬で眠らされたのなら別だけど、たとえ酔っていても記憶が全くないなんて都合の悪いことをごまかす手段だと思える。あなたは間違いなくお父さんの子供よ。秀一郎に似ていないという人がいるけどそんなことは気にしなくていいの。誰に言われたのか知らないけどお母さんを悲しませるようなことは言わないで」

美那子は自分が正しいと感じていても目の前の母親を苦しめていることは事実だと思った。
小さい頃から兄と一緒に育ち、誰がどう見ても二人は兄妹であり、両親は彰と美樹なのだ。たとえ何かの間違いで母親が違う男と関係したとしても、それが不幸を生み出しているわけではない。

DNA検査をして三枝が父親である確率が100%に近いと判断されたからと言って、自分は何をどうするのか見えていない。
母親が真実を語れば家庭は一気に崩壊し、兄妹の関係も壊れてしまう。
そんなことが判らない美那子ではなかった。

「美那子のお父さんは一人だし、自分を育ててくれたお母さんにも感謝しているの。三枝さんがたとえ本当の父親だとしてもそれは父とは呼べない人だという事ぐらい解っているの。だったらなぜそんなことを聞くんだって言われそうだけど、お母さんがバレるような行動をするから確かめたくなったというだけ。本当のことを聞かされても動揺しない。聞かされなくてもここでこの話は終わりにする」