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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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巡り合う街の不確定未来 探偵奇談16

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まだ空っぽの未来



ライブハウスに着くと、重低音が響き渡ってくるのが分かった。
スタッフにチケットを渡して半券を受け取る。「もう終盤ですよ」と言われるが、それでもいい。階段を降りると、ステージの演奏が飛び込んできた。熱気がすごい。ぎゅうぎゅうの観客が拳を突き上げて大暴れしている。瑞は郁とともに会場の後ろを壁沿いに進んだ。すると偶然、壁にもたれかかってステージを見ている伊吹を見つけた。

「先輩見っけ!」

演奏と歓声で声は聞こえないが、伊吹の口がウソだろ、なんで、と動き、その驚愕した表情を見て瑞は大満足である。曲が終わってから、瑞は隣の伊吹に話しかける。

「今日はいろいろあって、最終的にここに辿り着いちゃったんです。奇跡でしょ」

伊吹の驚いた顔がふっと溶けて、柔らかい笑顔に変わる。

「おまえすごすぎ」
「あたしライブハウスって初めて…すっごい熱気~!」

郁は興奮している。ぎゅうぎゅう詰めの会場に何の説明もなしに引っ張ってきたが、なんだか楽しんでいるようでホッとする。小さな彼女はコートを脱いで、周りに合わせてピョンピョン飛び跳ねていた。
友だちは、と耳元で尋ねると伊吹は指で前方を指した。最前列でもみくちゃになっているらしい。

曲が終わりしばしの間があく。アンコールのための楽器の調整を行っているようだ。

「それで、どういう経緯でここまでたどり着いたんだ?」

伊吹が尋ねてくる。

「今度ゆっくり話します。まじで俺、わらしべ長者だったんだから」
「わらしべ?」
「そう。究極のハッピーエンド」

最後に手に入ったのは、お金じゃ買えない幸せな時間。
一緒に聴きたかったんだ、好きな歌を大事なひとたちと。