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のしろ雅子
のしろ雅子
novelistID. 65457
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32話 あとは野となれ山となれ -猫への愛しさー

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30話 猫への愛しさ

 最近茫んやりしている時、自分の書いた「未生怨」という本の事を考えてる事が多い…。
 それは最近、その本に関して呆けて霞んでいた部分が鮮明になってきて、それは、自分の中である事に気付いたからで…。
 物語上の人物の正夫と祈之が好きで、特に祈之の事を考えると感情がこみあげてきて、その儚い少年を抱きしめるように思ってる自分がいる。
 それは自分が作り上げたキャラクターでなぜこんなに感情移入が出来るのか自分でも不思議な事だった。
「未生怨」は一気に書いた小説で、迷いなく短期間で書いた。
 大したプロットも組み立てず、何であんなにすらすらと書いて行ったのか…?
そうだ…そうか!と最近、ある思いに気が付いた。

 私は独りで暮らしていた頃一匹の捨て猫を拾った…。
 それは心ならずもと言う事で…。
 夜、友人たちと六本木を歩いていた時、行縋りの酔っ払いが私に向かって何かを投げてきた…それが手のひらに乗るぐらいの子猫だった。
 一緒にいた友人たちが「その辺に置いて早く行こう!」と促したが、猫は私の手にしがみ付いて離れない…よく見ると目の開かないめくら猫で、風前の灯のような風体で…まだまだ用事も多く外出も多い若い頃で、連れ帰ったら大変だと思いながら…必死に縋付く猫を結局置ききれない私は連れ帰ってしまった。
 帰ってからも、朝を迎えるまで私の手の中で震えが止まらない猫を、
翌朝、取りあえず医者に連れて行こうとコートの懐に入れてタクシーに乗ると、暫くして、胸元から顔を出し、私の顎のあたりに顔をすり寄せてきた。
 それまで震えていた猫の、突然の行動に吃驚したが、離れたくない、捨てられたくないと言う思いを感じて「大丈夫、大丈夫…」と声をかけていた。
 医者から「目も見えてないし、背骨も誰かに蹴飛ばされたか曲がってるし、状態は良くない生きても何日だと思う…背骨は相当痛い筈…どうする?」と暗に安楽死を勧められたようで、茫然としてしまった。
 猫の生き死になんて私が決められる訳無いし…、
ましてその時は、私と猫はまだ出会ったばかりで…、
「長生きできないんですか?」と聞くと「今日、明日と言う事もあるよ」と言う返事だった。
「とりあえず…飼います…看取ります」と痛み止めや栄養剤だと思うけど「気休めだけどね…」と言う薬を貰って帰ってきた。
 目が見えないので人肌に温めたミルクをスプーンで口元に持って行くと飲むので飲みたいだけ飲まして、擦ってあげるとおしっこが出たのでおしっこをさせて、目が見えないので離れると不安だろうと思って後は懐に入れて過ごし「今度は強い子で生まれてくるんだよ」と言い聞かせ、看取る用意は万全だった。
 ところが…あれよ?…あれよ?…あれよと日一日と目に見えて元気になって、目に張ってた白い幕も取れて、結局、看取るはずだった猫と私はその後十二年一緒に暮らした。
 やっぱり、ジャンプ力は無かったけど内弁慶の甘えん坊で部屋の中を飛んで走って廻っていた。
 人が来ると私の陰に隠れて誰にも懐かず触らせず不安そうにしがみ付いてる弱虫だったが、私との甘い生活は半端なく、鳥の習性じゃないが目が見えた時私が見えたせいか、あるいはめちゃめちゃ懐に抱いて甘やかしたせいか、元気になってからも甘えて甘えて大変で、抱かれて構われるのが好きでバスタブに入っていても、抱かれたくて私の首元に手を伸ばして濡れるも厭わず抱き付いて来たり、マンションで五階の部屋で近くの買い物の時はそこを開けていくのだが、その窓のレールに立って私がどっちに歩いて行くか見てて二時間でも三時間でもそこから私が帰って来るのを待ってて私の姿が見えるとキャ~キャ~大変でつま先立って私に向かって5階から飛び降りてきそうで、思わず身を隠したりしていた。
 その事は近所でも有名で知らない人から「いつも窓であなたの事待ってるのね、可愛いわね」と話しかけられたりしていた。
 猫の私への想いを書いたら限がなく、
「未生怨」を書いてる時殆ど筆を休ませず書いて行った記憶があり、猫と祈之の甘え方はそっくりで今でも猫が忘れられず、それが祈之を産んだんだなと思うに至った。
 もう一作小説を書いたのだが、まるでシチュエーションも物語は「未生怨」と、全然違うものなのだが底に流れるものは一緒と言われた。
 その物語は情念的で官能的でその淫靡さがちょっと発表するのに阻まれるのだが私としては入り込んで書いた一作であるので、引き出しの奥にしまってある。
 今又、新しいものを書きたいかなと思って書き始めているのだが、どうも私は出場人物に惚れなくては書けないようで…ストーリーを決めても人物のキャラを決めても入り込めなくてぜんぜん進まない…。