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のしろ雅子
のしろ雅子
novelistID. 65457
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29話 あとは野となれ山となれ -げに怖ろしき女の嫉妬ー

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29話 げに怖ろしき女の嫉妬

まだ学生の頃の話である。
 或る事務所に知り合いに頼まれて、友人のA子が留守番のアルバイトに行っていた。
 条件は身元のしっかりした学生という事でA子に話が来たらしい。
 ある日、事務所が近くのビルに引っ越すので荷物まとめに人手が必要だからお友達たちに頼んで欲しいとA子が頼まれ、数人でお手伝いに出かけた。
 所長は肉感的な40歳前後のテキパキとした美しい女性でとても優しくて、すっかり私達はフアンになってしまった。
 翌日の引っ越しにも駆り出され近くとは言えど二日に渡っての大仕事だった。
 その二日間で所長とすっかり仲良しになって、名前にママを付けて“Eママ”と私たちは呼んでそれからも頻繁に事務所に遊びに行くようになった。
 Eママはほとんど居る事が無く、偶々居るとすごく歓迎してくれてケーキを買いに行って紅茶を入れてくれていろんな相談相手にもなってくれた。
 その事務所はとっても暇だったのだが、独り頻繁に出入りする人がいた
ある大学の先生でその先生の仕事の窓口にこの事務所がなっているようだった。
二人の親しげな雰囲気で、すぐ恋人同士なんだと思った。
 先生にはご家庭があって、奥様がいらしたので公にはしていなかったが二人の仲は一目瞭然だった。
 これが身元のしっかりした学生が条件の所以だったらしい。
 得体のしれないアルバイトに自分たちの事情、仕事内容を詮索されるのが嫌だったのだろう。
 ある日、某ホテルの会場で先生のとある祝賀会があった。
 けっこう大きなパーティーのようで、Eママは「先生の教え子で将来の建築家たちがいっぱい来るわよ、有名な人達もいっぱい来るし、あなた達もいっぱいお洒落をしていらっしゃい」と招待された…と、思った。
 私達はいっぱいいっぱいのお洒落をして楽しみに出かけた。
 Eママも訪問着で艶やかでいつもより輝いて場を取り仕切っていた。
 私達が着くとすぐ、これあそこに持って行って…とかあの方にお飲み物聞いて…とか指図されて、明らかに招待されたんじゃなくて、手伝いで呼ばれた感じで…Eママの計算された思惑にちょっとしてやられた感があった。
 A子は着物でちょっと遅れてやって来た。
 A子は小さい頃から日本舞踊を習っていて名取の免許も習得し、あらたまった席には必ず着物を着ていたので私達に違和感は無かったが、
Eママが来て「何でそんな恰好で来たの」と酷くお冠で「もう…若いのに着物なんて…とっても可笑しい…帰って洋服に取り換えてきて」とパーティーも、もう始まってるのに言いだした。
「でも、A子はいつもパーティーなんかは、着物なんですよ洋服より、着なれているし…」と私たちが言ったが、
「若いのにお尻が見えるようなミニスカートの方がよっぽど可愛い…洋服に取替えて…」とその場を立ち去った。
 いつもA子を妹のように可愛がっていたのに様子が違っていた。
 A子はムッとして「お尻が見えるようなミニスカートって何!…取り替えろって家帰ってきたらもうパーティーなんか終わってる…これで遣る」とそのままでいると、少しして先生が来て「その辺の洋服屋さんで買ってらっしゃい…言う事を聞いて…洋服に取り換えて…請求はこっちに回して…」と言い残してまた挨拶に戻って行った。
 この大きなパーティーで先生までA子の装いにわざわざ触れてくるなんて…皆で顔を見合わせ、信じられないけどEママが自分より若くて着物の似合うA子に嫉妬しているとみんなが感じた。
 先生は仕方なく、機嫌の悪いママを宥めるため言いに来たようだった。
 お洒落は上司を超えちゃいけないんだという事を私達はその時しっかり学んだ。
 ママは鬼女のような面妖だったが…その出来事が過ぎると又、優しいいつものママに戻っていた。
 結局、A子は着替えずそのまま居続けたのだが、その事には、もう一切触れなかったらしい。
 その後…Eママのちょっと違う部分を感じたことがあった。
 皆で恋愛観など話している時「私先生にすごく嫉妬した事があるの…」とEママが話し始めた。
 先生がまだ助教授の時代からのお付き合いで先生が教授になった時、普通は彼氏が出世することは付き合いのある女性としては我事のように喜ぶべきなのだが、Eママは素直に喜べなかった。
 自分がそんな階段を上って輝かしい光に当たりたいと思ったそうだ、輝かしい場にいる先生に嫉妬した…とEママは話した。
 彼女は非常に野心家であったわけで、自分の存在を超えそうな若いアルバイトの装いすら許せなかったのかも知れない。
 げに恐ろしきは女の嫉妬…考えさせられる出来事だった。