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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「美那子」 旅行 一話

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美樹は秀一郎が学校に出掛ける前に、話があるから今日帰ってきたら時間を作ってと声をかけた。
そしてその日帰ってきた秀一郎を自分の寝室に呼んで話をした。

「ねえ、知っていると思うけど美那子アルバイトをコンビニでしているよね。その理由なんだけど、お母さんは妊娠した子の彼とお互いの両親が会って話すべきだと思っているの。お父さんもそうした方がいいって言うし。秀一郎はどう考えているのか聞きたいの」

「ええ?その話美那子が喋ったの?」

「そうよ。他から聞く話じゃないでしょ」

「お母さんが言うように親が中絶のことを知っていないといけないって思うよ。簡単に考えちゃいけないって美那子にも言ったよ」

「それでね、あなたから美那子に良く言って聞かせて、お金のことは支援してもいいけど、ご両親に話すように説得するようにしてほしいの」

「おれが話して聞くかなあ~」

「あなたのいう事なら素直に聞くってお母さん思うわよ」

「どうかな。もう17歳だし」

「そんなこと言って、言いたくないっていう事なの?」

「解ったよ。言うよ。期待はしないでくれよ」

秀一郎は母親の部屋から出てすぐに美那子の部屋に入った。
一時間ほど経って出て来て、台所にいる母親に近づく。

「美那子、話すって」

「そう!それは良かった。さすがお兄ちゃんね」

美樹はちょっとうれしくなって、振り返って秀一郎に抱きついた。軽い気持ちでそうしたのだが、秀一郎はちょっと驚いて顔を真っ赤にしていた。
からかう気持ちがあったのではないから、ごめんねと謝った。

「もう二度としないでくれよ」

そんないいかたしなくてもいいのにと美樹は思ったが、年頃の男性は母親に対してそういう感情を持つものなんだと改めて思い直した。
自分の部屋に戻った秀一郎は母親が抱きついた感触を引きずりながら、ある思いを感じていた。
それは、美那子と母親の違いだった。

年齢が違い過ぎるから当たり前だけど、そういう部分じゃなく、上手く言えないけどあえて言うなら匂いだった。
化粧の匂いではない。首筋から放たれて鼻に着く独特の肌の匂いだ。
それがピンと来たから、抱きつかれた後に真っ赤になっていたのだ。母親は芳之との情交を重ねていたから知らずのうちにフェロモンを出していたのかも知れない。

翌朝ご飯を食べる時も秀一郎は母親と顔が合わせられなかった。なんとなく恥ずかしいという気持ちがあったからだ。
隣りで美那子がそんな様子を目ざとく見つけた。

「お兄ちゃんどうしたの?」

「何がだ?」

「なんか変」

「何も変じゃないよ」

美那子はこの頃すごく大人っぽくなっている。そして、相手の気持ちが解るというか、勘が鋭くなっていた。