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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「美那子」 誘惑 二話

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この日美樹は眠れなかった。理由は美那子の出生がやはり夫ではなく三枝との間に出来た子供だという事がほぼ確実に思えてきたからだ。
三枝の堀の深い顔立ちが美那子を美人にしている。
自分も夫もうりざね顔とか、狐顔の部類に入るのでなおさらだ。

先祖返りという現象が起きると言われているが、母親も父親もそして祖父も祖母も日本人らしい顔立ちで、従兄弟も含めて自分の家系に堀の深い顔立ちの親族はいなかった。
夫は解らないが、少なくとも両親と祖父母は私たちの親族とそれほど変わらない。
美那子は色も白い。それも私たち夫婦からしてみれば特異だ。
もし夫がDNAを調べたいと言い出したら、すべてが明るみに出る。

眠れない時間が過ぎて、美樹は三枝と会って万が一の場合にどうするか相談したいと考え始めた。
この再会が事態を好転させるのではなく、暗転させる方向へと向かわせる。

同窓会名簿から三枝の連絡先を調べて美樹は電話か掛けた。
母親らしい人が出て、息子は別のところで暮らしていると教えられ、その先へ再び掛け直す。

「はい、三枝です」

電話に出たのは妻だろうか、娘だろうか。

「永田といいます。あのう昭和高校の同級生で同窓会のことで連絡したいのですが、芳之さん居られますか?」

「はい、父ですね。呼んできます」

美樹は妻ではなくホッとした。

「もしもし、代わりました。ひょっとして美樹?」

「うん、そう。久しぶりね」

「どうしたんだ急に?誰に連絡先聞いたんだ?」

「実家に掛けたらお母さんが教えてくれたの」

「用事は何だ?」

「会って話したいの。電話じゃ無理。都合つけてくれる?」

「会社の帰りなら残業とか言ってごまかせるから平日の夜ならいいよ」

「明日でもいい?早すぎる?」

「急いでいるようなことなんだろう?構わないよ。どこにしようか?」

「ちょっと離れているところがいいの。誰に会うかわからないから」

「そうだな。じゃあ、おれたちの高校の傍にしようか?道路の反対側に和風のレストランがあっただろう。その前で待っているよ。7時ぐらいなら行けるから待っていてくれ」

「うん、わかった。ゴメンね急に無理を頼んで。じゃあ、明日の7時に」