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藍城 舞美
藍城 舞美
novelistID. 58207
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Guitarist Party

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 7月10日、LOVE BRAVEのヒューゴ・マーロウとスティーブン・シュルツは、大御所ロックバンド「SELENIUM」のギタリスト、アミアン・スナイダーとサイモン・“アーヴ”・アーヴィング主催のギタリスト・パーティーなるイベントに向かった。このギタリスト・パーティーとは、数カ月に一度開かれる、プロギタリストたちが集まるパーティーのことである。スティーブンがそれに参加するのは初めてであり、名高いギタリストたちと生で対面する初めての機会でもあるのだ。そのため、彼は出発前から半端なく緊張していた。
「アミアンさんとか、アーヴさんとか、すごい顔ぶれですよね。俺、あがりまくって失神するかもしれないです」
 ギタリスト・パーティー初参加の最年少くんは、不安を全面に出した顔で年長の相方を見つめた。
「いや、そりゃ困る。というかそこまでガチガチになることないよ。今日来るメンバーはみんなナイスなギタリストだからさ」
「それならちょっと安心です」

 やがてヒューゴとスティーブンは会場に着き、アミアンが彼らを出迎えた。
「やあ、ヒューゴ」
「あぁ、アミアンさん」
 アミアンは、ヒューゴの傍らに居る少年に目を向けると、話しかけた。
「君がヒューゴの言ってた、スティーブン・シュルツかい?」
 スティーブンは、一流バンドの一流ギタリストのオーラに圧倒されそうになったが、何とか明るい顔で応対した。
「あ、はい、そうです。さ、昨年、LOVE BRAVEに入りました」
 アミアンは、穏やかな笑みを見せた。
「今日のパーティーを主催する、SELENIUMのアミアン・スナイダーだ。よろしく、スティーブン」
「あ、こちらこそ、よろしくお願いします」
 孫と祖父ほど年の離れた二人のギタリストは、握手を交わした。
(うわあ、すげ〜!俺、アミアンさん本人と握手してる!いや、ヤバいって!)
 スティーブンの心の中は興奮モードになっていた。
「今日は存分に楽しんでね」
「はい」

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 そのあと参加者が続々と会場入りし、全出席者がそろった。前菜のカナッペが彼らのテーブルに運ばれ、続けてドリンクも人数分運ばれると、参加者一人一人がドリンクの入ったグラスを手にした。アミアンの乾杯の音頭のあと、全員が大声で
「カンパ〜イ!!」
 と叫び、お互いのグラスを鳴らした。ちなみに今回は主催者アミアンの意向により、一人だけとはいえ未成年者が同席しているのでアルコール関連のトラブルを避けるため、ドリンクは一律ノンアルコール飲料にした。17歳のギタリストは、たちまち先輩ギタリストたちの注目の的となり、質問や賛辞の嵐を受けた。
「やあスティーブン。今日はよく来たね」
「生で見るとあどけない顔だな」
「LOVE BRAVEの雰囲気には慣れた?」
「いくつのときにギター始めたの?」
 スティーブンは有名バンドのギタリストたちに囲まれて初めは軽く震えていたが、ヒューゴが付いていてくれたのもあって、徐々に落ち着きを取り戻して先輩たちと楽しく会話した。

 その中で、インディーズ時代からLOVE BRAVEと仲の良いバンド「the Astronomy」のリズムギターを担当するジョシュア・コーストが話しかけてきた。
「スティーブン、君の居るバンドが再び『LOVE BRAVE』を名乗ったとき、俺も鳥肌立った。若かりし頃を思い出した。まさか15年後に『4人』に会えるなんて、予想すらしてなかったよ」
 スティーブンは返す言葉が見つからず、照れ笑いするばかりだった。ジョシュアの相方ギタリストのデレク・ジャンセンが話を続けた。
「そうとも。君がLBに入ったことでたくさんのBRAVERが歓喜したと、俺は思う」
 彼の言う「BRAVER」とは、他のバンドやその関係者がLOVE BRAVEのファンを呼ぶときに使われる用語である。
「俺たちも、君に感謝しているよ」
 ジョシュアはそう言うと、スティーブンの肩に腕を回して自身と密着させた。これには彼も目を線のように細くして、歯を見せて笑った。

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 ヒューゴとスティーブンがシューストリング(細身のフライドポテトのこと)やパエリアを食べていると、アーヴが彼らのブローチに目を向け、スティーブンに話しかけた。
「あ、LBのギタリスツはおそろいのブローチを着けてるね」
「あぁ、これですか。デザインは一緒なんですけど、真ん中のモチーフが違うんです」
 スティーブンはアーヴにブローチを見せた。SELENIUMのリズムギタリストは、桜と日本刀と和風の冠のブローチを興味深そうに見つめた。
「真ん中にある、この帽子のようなものは何?」
「あ、これは日本の冠だそうです」
「へぇ〜、日本モチーフとかハイセンスだな」
「いやぁ…」
 そんな彼らの会話を聞いていたアミアンも、ヒューゴにブローチを見せてもらった。
「いいデザインのブローチだ。共通デザインでモチーフ違いのを着けてるとこから、メンバー仲の良さが伝わってくるよ」
 アミアンは業界でも有名なLOVE BRAVEの仲良し度の高さをあらためて褒めると、静かな笑顔で一度うなずいた。ヒューゴは相方と目を合わせると、二人でほほ笑み合った。
作品名:Guitarist Party 作家名:藍城 舞美