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テイルズオブジアビス 星の願いが宿る歌

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4 新たな旅立ち


「おはよう、ルーク」
 屋敷の玄関に出ると声をかけられた。
「ああ、おはよう。ティア」
 あれから三日。その間休息をとって顔色も元通りになったティアは、見慣れた軍服できっちり身を包んでいた。
「ティアさん、おはようございますですの!」
「ミュウ!おはよう、そこにいたのね」
 ルークの肩に下がる道具袋から顔を出してミュウが手を振る。ティアの表情が僅かに緩むのがルークにもわかった。道具袋に手を突っ込み、ミュウを取り出してティアに手渡しながら尋ねる。
「ガイは?」
「外にいるわ。フィフィも一緒」
 昨日の夜、寝る前まではルークの部屋にいたはずなのだがいつの間にかガイの所に顔を出していたようだ。ここ三日の間で、そんなことが何度もあったのでもはや気にもならなくなっている。
「それ、持っていくのね」
 ルークの腰に下がる剣を見てティアが言う。左手で柄に触れながらルークが頷く。
「持ち出すのもどうかと思ったんだけどさ」
 厳密に言えば、これは剣ではない。形や大きさが似通っているが、本来は「鍵」だ。地殻から、ルークと共に帰還したローレライの鍵。かつて、創世暦時代に始祖ユリアの手によって生み出された遺物。第七音素(セブンスフォニム)の意識集合体“ローレライ”との契約の証とされ、二千年もの間ローレライと共に地殻に封じられていたが、ルークたちの旅の中で紆余曲折を経て蘇った。
「また何か役に立つかもしれないから持っていくことにしたんだ」
「そう」
 いいと思う、とティアも頷いた。
「それはあなたの傍にあるべきだわ」
 ローレライの鍵は、ルークの扱う超振動の力を増幅・制御することができる。出番がないに越したことはないが、いざと言う時悔やまないようにしておきたかった。
「それじゃあ、準備は大丈夫?」
「ああ」
「ですの!」
 ルークが頷き玄関の扉を開ける。外にはティアが言った通り、ガイがいた。
「よお。おはよう」
「おう」
 その肩にはフィフィの姿もある。挨拶をするように大きな尻尾がふさりと揺れた。
 短い階段を降りてガイの前に立つと、丁度玄関から両親や召使いたちが出てきた。ガイとティアが頭を下げる。
「父上、母上」
 ルークが身を返して両親に向き直る。クリムゾンとシュザンヌは階段を降りて、ルーク達と同じ高さに立った。
「くれぐれも気をつけて」
「無事に帰ってきなさい」
「…はい」
 ルークが微笑んで返すと、ふたりは小さく頷いた。
「ティアさん、ガイ」
 シュザンヌがルークの脇を抜けて、ルークの後ろに下がっていたティア達の元に近づく。フィフィはガイの肩から地面へ降りた。
「ルークのこと、よろしく頼みます」
「誓って」
「お任せ下さい」
 それぞれが礼をとる。ありがとう、とシュザンヌが言うとふたりが顔を上げた。その時、ガイはちらりとクリムゾンの方を見た。目が合うとクリムゾンは苦々しい表情で目を閉じ、ガイもまたすぐに目を伏せてしまった。フィフィがガイの肩にするりと戻り、その表情を窺うとガイは微笑んでフィフィの首元を撫でた。
「ミュウもご主人様をお守りしますの!」
「うふふ、そうでした。どうぞ息子をよろしくね、ミュウ」
「はいですの!」
「お前調子に乗るなっつーの!」
「みゅぅぅ〜〜」
 ティアに抱えられたミュウの眉間を人差し指でぐりぐりと押さえるとティアが「何するの!」とミュウを庇う。そのやり取りに、場にいた全員に笑みが浮かんだ。
「さあさあ、おふたりさん。そろそろ行こうか?」
「もう…相変わらずなんだから」
「そっちこそ!」
 ふん、と鼻を鳴らした後、ルークが再び屋敷の方に顔を向ける。
「…いってきます!」
「いってらっしゃいませ!」
 召使いたちの揃った送り出しの言葉に、ルークは少し驚いて目を見はる。しかしそれは一瞬で、次には笑顔で手を振って歩き出した。ぴしりと揃った召使いたちのお辞儀の角度はルークが背を向けるまで少しも揺れることなく、その光景はルークの心に焼きついた。