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隣のテーブルで

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隣のテーブルで

 少し遅い昼食と半日遅れの朝食を兼ねて午後はファミレスで執筆することが多い。ノートパソコンで小説のプロットを構築していると、隣のテーブルから女性たちの会話が聞こえてきた。

 ◇

『あたし明日からダイエットするんだ~』

(断言しよう! 明日から○○する! などと言う奴が実行したためしはない!)

『すご~い! 頑張って! 応援するから』

(応援するという奴は絶対に応援しない! 間違いない)

『とりあえず朝、公園を走ろうと思うの』

『なにそれ!? 楽しそう。あたしも行けたら行くね』

(行けたら行く、は行かないフラグだ。それにちっとも楽しそうではない言い方をしている)

『あ~食べた食べた! 美味しかった~。やっぱりスイーツは別腹ね』

(単に食い意地が張っているだけだと気づけよ!)

『あたし今月ピンチなの。必ず返すからここの支払いお願いしてもいい?』

(必ず返さない!)

 そう言って、ジャンボパフェとスペシャルパンケーキセットを食べ終えた二人はテーブルをあとにした。


 ◇


『ここだけの話にしてほしいんだけど、聞いてくれる?』

(ここだけの話で済むはずがない! ヤンママ二人が顔を近付けて話している)

『どうしたの深刻な顔をして? 大丈夫! 誰にも言わないから、話して!』

(深刻な顔に向き合っているお前の顔は逆に興味津々だぞ。この場合の大丈夫は、大丈夫ではない!)

 ここまで聞いていた私は、【誰も信じない魔法】の言葉を思い出した。
・一生に一度のお願い
・絶対に怒らないから
・誰にも言わないよ
・行けたら行く
・なにもしないからホテルに行こう
・先っちょだけ
(勘違いしないでいただきたい。鉛筆のことだ。先っちょだけ削るつもりでも、結構な量を削ってしまうものだった。 By ボンナイフ)

 話を若きヤンママの二人コンビに戻そう。(どうよ、この重複な言い回し!)

『旦那が浮気してたの。信じらんない!』

『え~~~!!! 嘘~!』

(どう見てもお前の顔は、嘘を否定している顔だぞ! 事実であってくれと願って、他人の不幸を蜜の味に変えようとしている!)

『旦那は魔が差しただけって言うけど、どう思う?』

(どんな答えを期待しての質問だ、それは!? そんな言い訳は他人にとってはどうでもいいことだぞ!)

『旦那さんを信じてあげたら。元の仲が良い家族に戻れるって!』

(お前はその「仲のよい家族」とやらを見たことがあるんか!? そりゃこんな美味しい話が離婚という簡単な結末をむかえたら、楽しめないだろうよ!)

『ありがとう。話を聞いてもらって決心がついたわ。私は今まで旦那一筋だったのに……』

(お~~~! どんな決心だ!?)

『子どもも旦那の子かどうか判らなくなったから、病院でDNA検査してもらう!』

(おいおい!)


 小説のプロットなどはどうでもよくなった。


 ◇


 こんなジョークがある。


 ある男がアンティークショップで買った古いランプをこすると、中からお決まりの魔人が現れた。

「お前の願い事をなんでも一つだけ叶えてやろう」

「本当ですか? 死ぬまでに一度月に行ってみたいんですが、ロケットは事故が怖いんです。歩いて月に行けるよう、月まで橋を掛けくれますか?」

「月までの橋を掛けろだと? そりゃ、ワシにも大仕事だ。もっと簡単な願い事はないのか?」

「そうですか……、じゃあ、僕の彼女のことなのですが、何を考えてるのか全然わからない時があるんです。『女の考えること』が理解できるようになりたいんですが……」

 魔人は頭をかいて、しばし考えを巡らした。そして、静かに言った。

「あのな……、さっきの月に橋を掛けろって願い事だけど、少し時間がかかってもいいか?」

(了)
作品名:隣のテーブルで 作家名:立花 詢