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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
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ポジティぶ なんだから (最終話の前に第9話追加)

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第6話 お金が足りないんだから



「あっ! 今何時だ!?」
「2時半になります」
「振込みしないといけないんだった! 銀行に走ってくれ!」
「ネットバンキングじゃ、だめなんですか?」
「取り扱い金額の上限を超えるんだ」

ボスにしては珍しく、急に慌てだして、血相変えてるんだから。

「お金お金!」
カバンから封筒を取り出したけど、すごく分厚いぞ。
「いくら振り込むんですか?」
「1200万」
「げっ! 1200万、現金で!? ATMでキャッシュカードからじゃだめなんですか?」
「カードは上限が1000万!」
「2回に分けるとか」
「1日の上限が1000万!」
「え? じゃ無理じゃないですか」
「だから現金には上限が無いから、3時までに窓口に走るしかない」
「それは大変だ。急がないと」

僕にもそれで、やっと緊迫感が理解できたんだから。

「数えてくれ!」
「はい。」
僕は札束をざっとつかんで、数えだした。
その間にボスは、部屋の中の引き出しや戸棚を開けて、動き回ってる。
どうやら不足分のお金を探してるようだ。
チラチラ横目で見ていると、あちこちから数万円ずつ出てくるんだから。
なんだか可笑しくなった。塵も積もればだな。

ボスは数十万ぐらいなら、なんとも思ってないんだから。

「1122万しかありません。あと78万です」
「これも数えて!」
ボスが部屋中から掻き集めたくしゃくしゃのお札を僕に手渡した。
「1,2,3,4,5・・・・・・26万。あと52万足りません」
「待ってろ」
「車の準備しておきます」
「おうー」
そう言うとボスは部屋を出て行った。他の部屋に探しに行ったんだ。

僕は外で車にエンジンをかけて、ボスが来るのを待った。
もう3時の閉店まで20分ほどしかない。
でも、ボスはなかなか出てこないんだから。

「これはやばいな」
僕は銀行までの最短ルートを考えた。
「だめだ、20分では間に合わない」
取引銀行ではない別の銀行なら、なんとか間に合いそうだった。

ボスが小走りでやって来た。
「スーツのジャケットにもあった」
僕はそれを数えた。
「43万です」
「あと10万くらいか。どっかにあると思うけど・・・」
ボスは自分の財布を開くと、中には意外にも千円札ばっかり入ってた。
「・・・財布には入れないんだ」
「何でですか?」
「入り切らないだろ。お前、10万くらい持ってないか!?」
そう言うとボスは自分の車の中まで探し出した。
「・・・財布には5万くらいなら入ってますけど」
「最悪それ貸してくれ!」
それでもボスは、かなり焦った表情をしている。
これは相当、重要な振込みだな。

「あった!」
トランクに積んだゴルフバッグの中のポーチから、また札束が出てきた。
数えなくても十分足りる厚みだったから、ボスは大急ぎで助手席に乗った。
でもその時は、にやけ顔なんだから。

何とかぎりぎり、振込み窓口で当日処理にしてもらって、オフィスに帰る途中で僕は気が付いた。
現金探さなくっても、キャッシュカードで不足分を下ろせばよかったと。

「もしもし。例の資金、振り込んでおきましたよ。いえいえ、お安い御用です・・・」
って、ボスは余裕の表情で電話してる。
成功者のお金の扱いって、本当に、ものすごいんだから。