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神殿長ジルヴェスター(7)

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ラルフ視点



 俺はラルフ。俺は森で叫んでいる。
「そんな良いものじゃねーよっ!!!!!!!!!!」
 夕方に空飛ぶ獣に乗って現れたお貴族様。それが長々と俺の家に居た事が噂になっている。

 お貴族様を招くなんて凄いっ!!

 最初にそう言ったのは誰か忘れたけど、口々にそう言われキレた。
 お貴族様に説教を受けた、あの恐ろしさを知りもしないで!!!、と。

 事の始まりはルッツだ。家族の反対を押し切って、勝手に商人見習いになって、家の手伝いである森の採集もしなくなって。なのに俺より給料が良くて。
 腹立ってたある日。危険な町の外に出るってダルアの癖して息巻いて、親父と怒鳴りあって出て行った。
 トゥーリの家だろって当たりを付けたら違ってて。そんでトゥーリにマインと2人で責められた。何でルッツの仕事先も知らないんだって。
 しかも森の採集に行かなくなったのは仕事があるからだって、ルッツが俺より給料が良かったのはその分が支払われているからだって分かった。

 ルッツが何も言わないからトゥーリに怒られた…。

 詰まらないかも知れないけど、益々腹立った。でも心配でもあったし、トゥーリの案内に従って、連れ戻しに行ったのにルッツは仕事中だから邪魔するな、と怒鳴った。勝手にしろ、って怒鳴って帰った。
 母さんも追い出された。それも営業妨害とか言われて、貧民を蔑まされた気がして…。
 親父は商売人はこれだから、って言ってた。店の利益しか考えねぇ、親の気持ちをちっとも分かってねえって。そんでもう放っとけって。
 …前にジークの処にルッツが来たって言う日の事も、話を聞いた時も親父は商売人は、って言ってた。
 補佐にルッツがケンカ売ってヒヤヒヤさせられたって。ルッツの雇い人は一緒に居たのに、ルッツを止めもしなかったって。
 そんなジークも時々ルッツに給料を抜かされる。家の手伝いもしない弟の癖に生意気だって愚痴って、ザシャもそうだなって同意した。
 芋づる式に思い出した事にまた腹立ちを深めた俺は、ルッツが森に行かなくなった理由を忘れてしまった。
 …ザシャ、ごめん。教えてたら何か変わったかも知れない。

 あの日、突然、お貴族様がウチにやって来た。
「突然済まぬな。其方等がルッツの家族で良いな?」
「ああ、そうだ。何だってアンタみたいなお貴族様が態々?」
 汚くて狭い我が家に似つかわしくないお貴族様。…怖い。何が始まるんだ?
「マインから話を聞いてな。ルッツは私も会って話をした事があるし、放って置くのは気分が悪い。」
「あのバカがっ!!」
 またマインかよっ!!! 親父の声にビビりながらも心ん中で突っ込んだのは俺だけじゃない筈だ。
「ディード、私はルッツが利発で、礼儀正しい少年だと思っている。あの年頃とは思えぬくらいだ。
 城に入るには早いが、神殿にいる青色神官や巫女なら充分に通じるだろう。何故、ルッツを否定するのだ?」
「バカと言えばバカだっ!!」
 お貴族様を巻き込むなんてそれ以外言い様が無い。
「私は其方と会うのは初めてなのだ。それでは分からぬ。説明せよ。」
「そう言われても…、ああ~、説明、説明…。
 アンタみたいなお貴族様を巻き込んで、こんな汚い処まで来させて、当人は居ない。この状況を作り出している時点でバカだ。」
 その通りだよな。
「私がここに来たのは、マインからルッツの事を聞き出し、ルッツを放って置けなかったからだ。全て私の独走で、ルッツはマインが私に事情を話した事も知らない。それは誤解だ。」
 お貴族様の言葉を否定する訳にも行かない。でもそうかも知れないけど、違うんだよっ!!!
「いや、まあ…。」
「更に付け足せば、マインにルッツの状況が伝わるのは当たり前の事だ。ベンノは2人を1組と扱い、大事な戦力と思っている。ベンノと其方等との間で起こった事は、全てマインの知る処になる。私がここに居る事、ルッツが居ない事、共にルッツに落ち度では無い。」
 ひいっ!!! お貴族様にも筒抜けっ!!!???
「…アンタはルッツとはそんな長い付き合いじゃ無い筈だ。マインを通じて知ったんなら尚更だ。何でルッツの為にそこまでしてやる? アンタはルッツの何を知っているんだ?」
「其方等程は知らぬ。只の私個人の見解だ。だが私の前にいるルッツは仕事用の姿を見せている。其方等の前で見せる姿とは違う筈だ。
 尤も仕事をしているルッツならば、ベンノの方が知っていようがな。」
「仕事している姿、か…。大したモンじゃないだろう。」
「何故、その様な事が言える? 其方はルッツが仕事をしている姿を客観的に見た事はなかろう? マインが言っておったが、職人職と商人職ならば、求められる資質もそれに応じる努力の形も違うのであろう? 
 其方等の前に居るルッツから、本当にルッツの技量を見極めているのか?」
「…そう言う事じゃない。」
「ではどう言う意味だ、説明せよ。」
「またか…。あ~、アンタは平民の事情が分からねーんだろう?」
「そうだ。だから詳しい説明が欲しいのだ。」
「…ルッツが働き出したのは洗礼後からだ。季節も変わっていない程の短期間働いただけの見習いが、大した事出来る訳が無い。」
「成程。しかしそのルッツを認めているのがベンノだ。遣り手の商人であるベンノの判断を認められぬと言う事になる。ベンノを信用出来ぬのは何故だ?」
「何故って…、当たり前だろう。」
「何故当たり前なのだ?」
 俺達は親父にこんな質問責めはした事が無い。何で分からないんだ、考えろって言われて終わりだからだ。
 だから親父の考えは始めて聞く訳で、驚く事がボロボロ出てくる。いつの間にか2人の会話に聞き入っていた。
「はあ…、あのな、まだ大した事も出来ないのに仕事が出来るとおだてて、危険が全く無い訳じゃない場所に連れていくと言う相手を信用出来るか?」
「成程、確かに信用出来ぬ。」
「そうだろう。だから商人はやめとけって言ってたんだ。」
 親父すげぇっ!! お貴族様が引いたっ!! …引く事が出来るお貴族様が凄いんだって、この時は分からなかった。…出来れば一生分かりたくなかったよな。
「しかし疑問なのだが、其方の先程の話では、ルッツとベンノは季節1つ分の付き合いしか無いと聞こえたが相違無いか?」
「あ、ああ。」
「マイン、ベンノ、ルッツの話ならば3人での付き合いは1年程になるが、それでもベンノがルッツを買っているのは可笑しい事なのか? 町の外に出るかどうかは一旦保留にして。」
「1年?」
作品名:神殿長ジルヴェスター(7) 作家名:rakq72747