二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

魔法つかいプリキュア!♦ダークジュエルストーリー♦

INDEX|29ページ/168ページ|

次のページ前のページ
 

第3話 ラナのとっても素敵な魔法!


 真夜中、ラナは一人窓辺に立って夜空を見上げていた。ベッドでは小百合がリリンを抱いて、二人で穏やかな寝息と立てている。
 無数の綺羅星を瞳に映すラナは、一年前のことを思い出していた。病気のおばあちゃんがベッドの上で言ったことが忘れられなかった。おばあちゃんは氷漬けの冷凍みかんをだして、優しい笑顔でラナにこう言うのだ。
「ラナや、このみかんを解凍してごらん」
「うん! いくよ〜、キュアップ・ラパパ、氷よ解けて!」
 ラナが魔法のステッキを振って冷凍みかんに向けると、それが突然宙に浮いて暴れだした。あっちへ行っては壁にぶつかって跳ね返り、こっちへ行っては天井にぶつかり跳ね返る。
「うわあ、どうしよう!?」
 ラナが慌てていると、おばあちゃんが魔法のステッキを出して言った。
「キュアップ・ラパパ、冷凍みかんよ止まりなさい」
 空中で止まった冷凍ミカンが、ラナの頭の上に乗っかる。
「さすがおばあちゃん!」
「ふふ、お前は本当に魔法が下手だねぇ。でもね、お前はもう、だれにも真似できない素敵な魔法を持っているんだよ」
「本当? どんな魔法?」
「そうだねぇ。自分ではその魔法のすごさは、なかなか分からないかもしれないけれど、お前を必ず幸せに導いてくれる魔法だよ」
 そう笑顔で言ってくれたおばあちゃんは、それからひと月もしないうちに息を引き取った。
 ラナは星降る窓辺で小さくなっている箒を出して言った。
「わたしがちゃんと使える魔法って言ったら、空を飛ぶことくらいだよね。これで幸せになれるのかなぁ」
 ラナは急に眠くなってあくびをすると、小百合と一緒のベッドに入ってすぐに眠ってしまった。

 聖沢家の朝は掃除から始まる。メイドの巴や小百合と一緒に、ラナもメイドの服を着て掃除を手伝っていた。その華奢(きゃしゃ)な肩にはリリンがしがみ付いて掃除の様子を見つめていた。小百合は手伝わなくていいとラナに言ったが、ラナは手伝うと言ってきかなかった。結局は小百合の方が折れて、ラナにぴったり合うメイドの服まで持ってきてくれた。
「そりゃ〜」
 ラナが猛ダッシュして廊下のモップ掛けをしていた。
「すごい速さデビ、ラナはモップがけの名人デビ」
「えへへ、そうかな〜」
 リリンに褒められていい気分になっていたのは束の間で、立ち止まって見ると廊下は果てしなく続いていた。
「それにしても広いお家だな〜。よし、こういう時は魔法で!」
 ラナは先端にひまわりの花のような形のクリスタルが付いている魔法のステッキを出すと呪文を唱えた。
「キュアップ・ラパパ、モップよ床をお掃除して!」
 ラナが杖を振ってモップに向けると、手に持っているモップが小刻みに震えだす。何やら様子がおかしいので、リリンが首を傾げた。
「デビ?」
 唐突にモップは車が急発進するような勢いで爆走した。
「うわーっ!?」
「デビーっ!?」
 モップをしっかり握っていたラナは、風に翻弄される旗のようになってモップの柄にくっ付いていた。ほとんど空中を飛んでいるような状態だ。
「ものすごい速さデビ、ジェットコースターみたいデビ〜」
「やった、わたしの魔法成功した!」
 ラナとリリンが猛スピードで巴の目の前を通り過ぎる。暴風にさらされて髪が揺れる巴には、何が通り過ぎたのか分からず口を開けたまま立ち尽くした。
 モップはラナとリリンを付けたまま、急に曲がったりその場で円を描いたりして爆走を続ける。もうラナもリリンも掃除のことなど忘れて、遊園地の絶叫マシンに勝るとも劣らないモップアトラクションを楽しんでいた。
「あはは、すごいよこれ!」
「楽しいデビ〜」
 そして爆走するモップは先が行き止まりになっている袋小路に進入した。そこでは窓ふきを終えた小百合が水の入ったバケツをもって立ち上がったところだった。
「小百合、どいて! ぶつかっちゃう!」
「え?」
 小百合が声のした方の振り向くと、モップと一緒にラナが迫ってきていた。
「ええぇーっ!?」
 もうぶつかると思ったラナは、魔法のステッキを出して呪文を唱える。
「キュアップ・ラパパ、モップよ止まれーっ!」
 すると、モップはいきなり真横にぶっ飛んで、すぐ近くの窓ガラスを突き破った。
「うわぁ!」
「きゃあっ!」
「デビーっ!」
 ラナとリリンは小百合に激突、その拍子に水の入ったバケツが真上に弾け飛んだ。
「いたたー」
 ラナは尻餅をついた状態だった。そこにリリンが飛んできて何故か楽しそうに言う。
「びっくりしたデビ!」
 その近くでびしょ濡れの小百合が立ち上がった。その頭にはうまい具合にブリキのバケツが乗っかっていた。
「どうしたの小百合、バケツなんてかぶっちゃって!」
「小百合、おもしろいデビ!」
「おもしろいですって?」
 小百合の中で湧き上がってきた怒りがマグマのように沸々(ふつふつ)と煮え立つ。静かなる怒りがオーラとなって体中から燃え上がっていた。その姿にラナとリリンは震えあがった。
「ふざけんじゃないわよ!! あんた達のせいでこうなったんでしょ!!」
 小百合が怒りを爆発させると、ラナとリリンはごめんなさいと言いながら何度も平謝りした。
「小百合さん、どうしたんですか!? 今の音は何です!?」
 その場に駆けつけた巴は唖然とした。床も小百合もびしょ濡れで、割れた窓からは風が吹き込んでいた。
「こ、これは一体!? と、とにかく、まずは割れたガラスを片付けないといけませんわ!」
 巴がふと外を見ると、モップが岸に釣り上げたばかりの魚のように跳ね回っていた。
「モ、モップが!? モップが勝手に動いてるーっ!?」
 巴はリリンを抱いて立っているラナを見て動いてるモップを指さす。
「ラナ様、あのモップ確かに動いてますわよね!?」
 その時、リリンが顔を上げて巴に向かって右手を上げた。
「いやぁーっ、お嬢様のぬいぐるみが勝手に動いたーっ!?」
 小百合はラナからリリンを取り上げ、それを巴から見えないように隠すと、もうやけになって叫んだ。
「大変だわ、ポルターガイストよ! この屋敷には悪霊が住み着いているんだわ!」
「あ、悪霊!? まあ、どうしましょう! 霊媒師、いえ神父さんかしら!? は、早く連絡を!」
 巴は慌ててその場から走り去った。小百合はびしょ濡れのまま近くの窓を開けて窓枠を乗り越えて暴れているモップを捕獲すると、それを家の壁に押し付けてガムテープで動かないように固定した。そして窓枠から家に飛び込むとラナの手を掴んで自分の部屋に引っ張り込む。
「あんた達なんてことしてくれるのよ! とんでもない騒ぎになるわよ!」
「ごめんごめん、ちょっとだけ魔法失敗しちゃったよ」
「ごめんデビ、ちゃんと挨拶しないといけないと思ったデビ」
 小百合はため息と一緒に額を押さえる。本当に頭が痛くなってきた。
「もう、あんた達は! リリンはここから絶対に出ないで! ラナはもう掃除しなくていいから大人しくしていてちょうだい!」
 それから小百合が濡れた服を脱いで制服に着替え始めると、まだメイドの姿のラナがベッドに座って足をふらふら動かしながら見ていた。そして、急に立ち上がると言った。
「わたしも小百合の学校に行きたいな」