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魔法つかいプリキュア!♦ダークジュエルストーリー♦

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第16話 いきなり出現!? 白い月の塔と二つのサファイア!



 校長がドームの部屋から奥へと進むと、床に描かれた宵の魔法つかいの魔法陣が全体から放たれる光が柱になって天井にも同じ形の魔法陣を映していた。その光の中に、黒、白、金の3冊の分厚い本が浮いている。
「これが古(いにしえ)の歴史を記した書か」
 校長は光の中に手を入れて本を一冊ずつとり、もう片方の手の上に置いていく。本は魔法で校長の手の上に浮いていた。そして彼が3冊全ての本を手に入れた時、杖の中のエメラルドが眩い輝きを放ち、校長は思わず目を閉じた。光が落ち着いてから目を開くと、そこは魔法図書館の扉の前だった。
「エメラルドがここまで連れてきてくれたのだな」
 校長が杖の先端を見ると、もう水晶玉の中からエメラルドの姿が消えていた。
「校長先生!」
 走ってくるリズの後を水晶が浮遊してついてきていた。更にその後には教頭先生の姿もあった。
「おお、教頭、リズ先生……」
「よくご無事で」
 リズは安心しきって今にも涙が零れてしまいそうだった。
「魔法界の礎は奇跡の光によって帰還すると、お告げがあったのですわ」
 水晶がリズの肩の上あたりに浮きながら言った。その時、リズの目の前にいた校長が急に意識を失って倒れる。
「校長先生!!?」
 倒れてきた校長をリズが抱きとめると、自分が思っていたよりも校長の体がやせていて驚く。校長の手から3冊の本が図書館の床に滑り落ちた。
「すまぬ、このような体たらくで……」
 意識を取り戻した校長の細い声が、リズの耳元に聞こえた。リズはとりあえず校長をその場に寝かせて、自分のひざの上に彼の頭を置いてやると少しだけ驚いた。校長のつややかな銀髪は白髪に変わり、無数の皺が刻まれた顔には長い白髭がたくわえられていた。
「校長先生、しっかりなさって下さい!」
 校長がいきなり老人になったことで、リズはその身を案じた。
「寝ている場合ではない……本を……」
 校長が手探りで落とした本を探していると、それを教頭が拾い上げて言った。
「校長、そのお体では無理です。お休みになって下さい」
「だめだ。今すぐに虚無の時代の謎を解き明かさねば……」
 校長が苦しそうに教頭の持つ本に向かって手を伸ばすと、教頭は厳しい顔で言った。
「あなたにこれ以上無理をさせるわけにはいきません。そのお役目はわたしとリズ先生にお任せ下さい」
 校長は諦めて伸ばした手を下におろした。
「……わかった、君たちに任せるとしよう。その本にいか様な事実が書かれていようとも、どうか冷静に事を進めてもらいたい」
「お任せください」
 教頭は厳しい顔のまま事務的に答えた。彼女のぶれない姿は校長を安心させた。それから校長は、心配そうに自分の顔をのぞき込んでいるリズに言った。
「君には今少し校長代理でいてもらわねばならぬようだ」
「わかっています。しっかりとお役目をはたしてみせます」
「頼んだぞ……」
 それから校長は目を閉じて動かなくなった。
「そんな、校長先生……」
 悲愴な顔をするリズに対して、教頭は診察する医者のような目で校長の顔を見つめる。
「寝ているだけです。よほどお疲れになったのでしょう」
「そうでしたか、わたしはてっきり……」リズが心臓の鼓動を押さえるように胸に手を置く。
 教頭がため息をついていった。「まったく人騒がせな」
 そして教頭は、拾った3冊の本の内、一番上になっている伝説の魔法つかいの魔法陣が表紙になっている金色の本を手に取って返した。裏表紙には宵の魔法つかいの魔法陣が描かれていた。



 魔法界に朝日が昇る。朝早くからみらいの様子を見に来ていたリコは、部屋の空気を入れ替えようと窓に近づく。彼女がやわらかな春の日差しに目を細めると、後で衣擦れと人の動く気配がした。
「みらいが起きたモフ―ッ!」
 リコが振り向くと、起き上ったみらいが眠そうに目をしばしばさせて、ベッドの上に立っているモフルンが両手を上げて体いっぱいに喜びを表していた。
「うーっ、なんかお腹すいた」
 リコはみらいに近づくごとに、その表情をかえていった。喜びの笑顔から瞳に喜びの涙が溢れ、そこに申し訳ない謝りたい気持ちがたくさん注がれた。
「リコ〜っ?」
 寝ぼけ眼(まなこ)のみらいにリコが抱きついた。
「みらい……ごめんなさい……」
「リコ……」
 静かに涙を流す親友を背中を抱いて、みらいは満たされた気持ちになる。
「また、心配かけちゃったんだね。わたしの方こそ、ごめんね」
 同じ時、別の場所でも穏やかな喜びに満ちた瞬間が訪れていた。小百合は起き上ったラナを強く抱きしめて何も言えずに泣いているばかりだった。言いたいことはたくさんあるのに、うまく言葉にできなかった。いきなりの事に驚いていたラナは、すぐに笑顔になって小百合の絹糸のように滑らかな黒髪をなでた。
「よしよし」
 リリンは近くのテーブルの上に立ち、強く触れ合う少女たちの姿を輝く星の瞳で見ていた。
 開いている窓から春風と一緒に小鳥のさえずりが入ってくる。一年中春の魔法界の天気は今日も穏やかであった。



 いまの魔法学校は何となく色めきだっていた。
 教室に集まった生徒たちの視線が教壇の前に立っているリズに集まっている。大切な話があるというので、みんな緊張して若き校長代理を見つめていた。
「今日はみなさんに重要なお話があります。校長先生が先日お帰りになりました。けれど、少し体調が良くないので、もう少しの間わたしが校長代理を引き継ぐことになりました」
 生徒たちの間からざわめきが起こる。みんな不安そうな顔をしていた。校長がまだ旅に出ている事にすればよさそうだが、リズはこれ以上は生徒に嘘をつきたくなかったので正直に打ち明けた。
「そんなに心配しなくても大丈夫よ。旅の疲れがあって寝込んでいるだけですから」
「あの校長先生が寝込むなんて、よっぽど大変な旅だったんだな。まあ、リズ先生がまだ校長でいてくれるのは嬉しいよな」
 ジュンが言うと、教室中が何となく明るくなって楽しそうな話声が広がる。するとリズは少し強い調子で言った。
「あなたたち止めなさい。それじゃ校長先生が寝込んでいるのを喜んでいるみたいじゃない」
「校長先生はもちろん心配だけど、代わりにリズ先生が校長先生でいてくれるのが嬉しいんです」
 ケイが言うと、リズは嬉しい反面、校長に対する気持ちで重くなってしまった。
 その日も授業の合間に教頭と一緒に学校の廊下を歩いていると、リズ先生! リズ先生! と生徒たちが手を振ったり挨拶したりしてくれる。生徒たちの中にはリズを敬愛(けいあい)すると同時に、一流の女優か人気のアイドルでも見ているような楽しさがあった。
「リズ先生の人気はすごいですね。校長先生が廊下を歩いていても、生徒たちがわざわざ教室から出てきてまで挨拶はしていませんでしたよ」
「何だか校長先生に悪い気持ちになります。生徒達からちやほやされているような私が、校長の役目など引き受けてよかったのでしょうか? わたしには校長先生のような威厳(いげん)はありませんし」