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魔法つかいプリキュア!♦ダークジュエルストーリー♦

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第15話 生徒たちの為に!! 校長先生と魔法の図書館!




 ロキが玉座の上で頭に手を置きながら二人の部下を見おろしていた。赤い髪をかき上げようとして、何かに驚いて途中で止めたというような姿だった。巨体のボルクスはロキの前で目に見える程に恐怖して震え、フェンリルの方は猫の姿で堂々と主を見上げていた。
「ボルクス、お前はもういい。俺が呼ぶまですっこんでろ」
「へ、へい!」
 何のお咎めもない事にボルクスはすっかり安心して、石床を振動させながら去っていく。ロキはフェンリルとさしになると、頭の手を玉座のひじ掛けにおいた。
「まさかお前までへまをするとはな、見損なったぜ、フェンリル」
「それについては返す言葉もありません。しかしロキ様、収穫はありました」
「ほう、なんだ言ってみろ」
「プリキュアの力の本質が分かりました」
 それを聞いたロキの表情は鋭くなる。フェンリルはロキの反応を見てから言った。
「プリキュアも人間だということです。人間は愛だの友情だの思いやりだの、そんなようなもので大きな力を発揮する時があります。プリキュアはそれらの感情からもたらされる力を、もっと強大に、そして安定的に発現することができるのです。怖いのは、例え敵対していても、プリキュアの間には憎しみなどは存在し得ないというところです。奴らの本質から考えると、そういう結論にならざるを得ません。宵の魔法つかいと伝説の魔法つかいが手を結ばないうちに、対処するべきです」
「おまえは何を下らねぇことを言っているんだ! 奴らは光と闇、対極の存在だ。手を結ぶなとありえねぇし、憎しみもなしにやりあう事などもっとありえねぇ! そんなつまらんことを言っている暇があったら、もっとましなことを考えろ! 俺様の為に命をかけて働きやがれ!」
 ロキを見上げるフェンリルの目は予想外な悲しみにでも出会ったかのように、オッドアイに暗い輝きをおびた。
「ロキ様、申し訳ありませんでした。もちろん、あなた様の為に誠心誠意尽くします」
 フェンリルは小さな頭を下げてロキの前から去った。それから彼女は、暗い廊下を歩きながら言った。
「ロキ様にはプリキュアの恐ろしさが理解できないのだ。それも仕方がないか、あのお方に愛だの友情だの分かるはずもない。あのお方にとって、そんなものは考えるにも値しない塵あくた同然のもの。そこが恐ろしいんだ、そこが」
 このままでは主が危険だとフェンリルは強く感じていた。
「やはり、わたしがやるしかないな。片方のプリキュアを始末する」
 その瞬間に、フェンリルは目に廊下の闇を貫くような強い殺意があらわとなった。
 


 つい最近、伝説の魔法つかいと宵の魔法つかいが死闘を演じた現場の上に一反の絨毯が浮いていた。その上から校長が大きくえぐられた大地を表情を石のように強張らせて見つめていた。この一帯だけが世界が終わったかのように何もなくなっていた。
「なんということだ……」
 校長は局所的に終わった世界を見ながら決断した。
「これ以上生徒達を傷つけるわけにはいかん。やはり、あの場所へ行かねばならぬ!」



 魔法学校まできた小百合は、すぐにでも学校から出ていきたかったが、魔力をほとんど使い果たしていたので少し休む必要があった。小百合は休むついで校門の前でリコにお願いをした。
「もし許してもらえるなら、みらいに会わせて」
 その申し出にリコは少し黙ってしまった。嫌だったのではない。今のみらいの姿を見て、小百合がどんな気持ちになるのか考えると、迷ってしまったのだ。その沈黙をどう受け取ったのか、小百合が言った。
「わたしは自分のしたことを、ちゃんとこの目で見たいのよ」
 リコは小百合らしいと思ってうなずいた。
「わかったわ、ついてきて」
 校門の前で動けないでいた二人は、少し体力が回復してようやく歩けるようになった。
 二人で並んで学校の校舎に入ってすぐに、リズが飛んできた。
「リコ! 今までどこに行っていたの!? 心配してずっと探していたのよ!」
「えっ、えと……」
 リコは焦ってしまった。まさか、闇の結晶を探しに行ってヨクバールに襲われたなどとは言えない。リズは今度は小百合の方も見て咎(とが)める口調でいう。
「小百合さんまで一緒で何をやっていたの?」
「リズ先生、リコとはさっき外で会いました。わたしはどうしても、みらいの様子を確かめたいんです」
「そう、そうなのよ! 気晴らしに散歩していたら、たまたま小百合に会ったの」
 リコが言うと、リズは眉を寄せたまま黙った。怒っているのと心配しているの半々みたいな顔をしていた。リズはみらいの身に起こった悲劇の原因を知っている。みらいの事で落ち込んでいたリコが気晴らしに散歩というのは分からなくもなかったが、小百合が一緒にいるのが普通ではないと思った。でもリズは、何も聞かないで二人を行かせることにした。
「事情は分かったわ。危ないからもう一人で外に出たりはしないで」
「ごめんなさい、お姉ちゃん」
 それから二人と二体のぬいぐるみで、みらいが眠っている医務室に向かった。



 春風にみらいのベッドの周りに引いていあるレースのカーテンが揺れていた。カーテンの内側にきた小百合は、ラナと全く同じ状態で眠っているみらいの姿を見て、胸がつぶれるような気持になった。自分の行動がどんな結果を招いたのか、さらに実感することになった。モフルンが足音を鳴らしてベッドの周りを走り、ベッドによじ登ってみらいの顔をのぞき込んだ。小百合は後ろに立っていたリコの方に向いて言った。
「殴らないの?」
「そんなことできないわよ」
 リコが即答すると、小百合はどこか辛そうな顔をしていた。リコは小百合が本当は殴ってほしかったのだとわかった。そうする事で小百合の気持が少しは楽になれたのだろう。でもリコにはできなかった。友達の事を真剣に思っている小百合の気持が分かり過ぎて、小百合が望んでいたとしても、殴ることなどできはしないのだ。
 小百合は自分にさらに苦しみを与えるように、みらいを見つめていった。
「今回のことは謝るわ。こんなことになったのは、全部わたしのせいよ」
 リコは自分よりも背の高い小百合の背中が妙に小さく見えた。小百合はフレイアという人のために我を忘れて戦った。その事もリコは知っていたので、恨むような気持にはなれない。
「あなたを許すとは言えないけれど、このことで一番苦しんでいるのは小百合自身だわ。自分で自分の友達を傷つけてしまったんだから。だからわたしは、あなたを責めないわ」
「そう……」
 リコが見ている小百合の後ろ姿からでも苦しんでいる感情がひしと伝わってきた。
「おーいっ!」
 どこからともなく誰かの呼ぶ声が聞こえてくる。その声は何度も「おーい!」といいながら近づいてくる。リコも小百合も声を追って開いている窓の方に目がいった。すると、そこから荷物を手にぶら下げたチクルンが飛び込んできた。彼は部屋に入ってきた途端に飛行機が突然止まったかのように、ぴゅーっと下に落ちた。
「ふぎゅっ!?」