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魔法つかいプリキュア!♦ダークジュエルストーリー♦

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第10話 プリキュア大ピンチ!? モフルンとリリンがさらわれちゃった!


 翌朝もみらいは元気がなかった。寝間着から着替えもせず、自分を慰めるようにモフルンを抱きしめて下を向いていた。光を移すラベンダーの瞳は潤んでいるのかキラキラと光の具合が変わっていた。制服姿のリコが自分の机の椅子に座って少し離れた場所からみらいを見守っていた。
「モフ、みらい……」
 モフルンが呼びかけても、みらいは無反応だった。こんなに悲しみに暮れているみらいの姿を見ると、リコは絶望的な気持ちになってくる。リコはこうなって、みらいが自分に対して持っている影響力の大きさを思い知る。いつも明るく元気で事あるごとに励ましてくれるみらい。そのみらいが元気をなくしただけで、リコの周りの世界は闇が降りたように暗くなってしまった。
 ――いつもみらいには元気をもらっているんだから。だから、今度はわたしがみらいを励ますのよ。
 リコはそう思うが、小百合がみらいに与えた衝撃はあまりにも大きく、今のみらいから悲しみを取り除くことは不可能であった。リコは決心して立ち上がった。
 リコがみらいの前に立って、彼女の肩に静かに手をそえる。それでようやくリコの存在に気づいたというように、みらいがはっとなって顔を上げた。リコとみらいの目がしっかりあった。
「みらい、あなたの悲しむ気持ちは、わたしにはどうにもできないわ。戦えないならそれでもいいから、この話だけ聞いて」
「リコ……」
「これはわたしが勝手にそう考えてるんだけど、闇の結晶はわたしたちが思っている以上に危険なものだと思うの。今はまだ分からないけれど、あのデウスマストのように二つの世界を脅かすような、そんな恐ろしいものにつながっている気がする。ナシマホウ界にはみらいの家族だっているし、ともだちだってたくさんいるわ。それを守るためには、わたし一人じゃ無理なのよ。みらいがいてくれないと、何を守ることもできない。どうしてもあなたの力が必要なの。これからも辛い戦いがあると思うけれど、みらいにはずっと隣にいてほしいと思っているわ」
「リコ、ごめんね」
 みらいは瞳に溜まった涙を払って立ち上がり、濡れた瞳でリコと見つめ合った。
「わたしはいつでもリコと一緒だよ。どんなことがあっても離れないから」
 みらいの表情が変わってモフルンは喜びでいっぱいになった。
「みらいが笑ったモフ」
 一応は元気を取り戻したみらいだったが、内面では悲しみに耐えていることをリコは痛いほどわかっていた。

 ――なんだあの女の子は、さっきから様子がおかしいぞ……。
 店主がその女の子をじっと見ていた。魔法商店街のとある食料品店で銀色の髪をポニーテールにした金色とターコイズブルーのオッドアイの少女が何かを探し回っている。しかし探しているものが見つからないようで、店の中を何周も回っている。見た目がきれいなだけに、余計に挙動が目立っていた。
「ない、ない、ここにもないのかっ!!? だーっ!!」
 人の姿のフェンリルが頭をかかえて悶絶すると、近くで買い物をしているお客が変な目で見て離れていく。営業に差し障りありと判断した店主が彼女に近づいた。
「お客さん、なにをお探しで?」
「おい、お前! ネコ缶はないのか!?」
 フェンリルが店主の胸倉をつかんでガクンガクンと振りまくる。店主が目を回しながら言った。
「お、お客さん、落ち着いてください!」
 ようやく解放された店長は死ぬかと思った。
「ネ、ネコ缶なんてものは聞いたこともありませんよ」
「な、ないのか……。じゃあ、百歩譲ってちょっと高級なキャットフードでもいい!」
「なんですかそれは? 猫に関係している物ということは何となくわかりますが……」
「猫の餌だよ! なんかないのか、そういうの!?」
「猫の餌だったら、肉か魚でも食べさせればいいでしょう」
「今さらただの肉や魚なんて食わせられるか!」
 フェンリルはいきなりその場に崩れて、四つん這いで絶望した姿をさらす。
「なんてことだ、魔法界にネコ缶がないなんて、わたしはどうすればいいんだ。このままじゃあ、あいつらに愛想をつかされて、わたしの女王としての地位が……」
 わけの分からないことを言っているフェンリルに店長もお客さんもドン引きした。
「あの、お客さん。ただの肉や魚がダメなら、自分で美味しい餌を作ってやるというのはどうですか? この本がおすすめですよ」
 店長が懐から杖を出して振ると、レジの隣にある山積みの本から一冊の本が飛んでくる。なんで食料品店に本が置いてあるのかというと、特別よく売れる料理本だからである。
 フェンリルは少し希望がわいて立ち上がり、店主から本を受け取ってパラパラとめくっていく。
「よし、この本をくれ!」
「まいどあり!」
 店に迷惑をかけていたフェンリルにうまく本を売った店主は満面の笑みを浮かべていた。
 フェンリルは商店街を歩きながら料理本に目を通した。
「材料とか色々あってめんどくさいな。こんなのいちいち覚えてられないよ……」
 フェンリルはパタンと本を閉じて少し考えて本の裏側を見始める。
「そうだ、この本を書いた奴に教えてもらえばいいんだ。その方が手っ取り早い」
 フェンリルは走り出すと、途中で白猫の姿になりその背中に本を乗せた状態で光の翼を開いて空に向かって飛んでいった。

 フェンリルはしばらく飛んで、商店街からかなり離れた場所まできていた。ここは春の領域の北端辺りで、魔法学校のある辺りより少し気温が低い。
「あの島か」
 フェンリルの真下に高く切り立った樹木の上にある大きな街が見えていた。全体としては山のように巨大な樹を途中で伐採して、切り口の平坦な部分に街を置いてあり、街に至るまでの幹の部分にはいくつも枝が伸びている。枝と言っても普通の樹木に例えれば樹齢百年はあろうかという太さで、それが無数に枝分かれして先端の方で葉が茂る。一本の枝から茂る葉だけでも緑色の雲とでもいうような壮大さで、そういうのがいくつもあって、島の端から下を見おろしても海が見えないほど緑が深かった。街にはなかなか立派な建物があつまっていて、街全体がきれいな六角形の中に納まっていた。街の中央には杖の樹があってその周囲には建物がなく、六角形の緑の草原の広場になっている。フェンリルはその草原に面した屋敷の前に降りて光の翼を消すと、全身が白い光に包まれて人の姿に戻った。
「この家だな」