二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

MEMORY 尸魂界篇

INDEX|51ページ/67ページ|

次のページ前のページ
 

15,秘密





 四楓院家に侵入した属を捕らえたという砕蜂からの報告を受けて、元柳斎は顔を見せていた京楽と浮竹を前に頭痛を堪えるように額を押さえた。

「被害は?」
「ない。」

 京楽の問いに砕蜂が素っ気無く応えると、京楽と浮竹が怪訝な表情をする。

「夜一様は就寝される前に、四楓院家の穿界門で現世に向かわれ、浦原喜助に崩玉を預けてすぐにお戻りになられていたのだ。賊の目的は崩玉だったようで、夜一様が返り討ちになさり私が捕らえた。」
「一護ちゃんの読み通りだったわけだねぇ。」
「………。」

 認めるのは厭わしいらしく、砕蜂は口を開かない。

「あの娘、まだ何か隠してるよねぇ?」
「余分な詮索や干渉を受けるのが嫌で明かさないと言ったところなんだろうな。」

 京楽の意見に浮竹も同意を示す。

「それでは示しが付かないのでは?」

 生真面目な砕蜂の意見に、京楽が困ったように頬を掻く。

「そうは言っても、一護ちゃんは本来尸魂界とは関わりなく過越せる筈の現世の生き人だからねぇ。」
「だからと言って見過越せるほど些細な力ではあるまい。」
「正式に死神代行と認めた上で監視下に置く方が良いんじゃないかな?」
「そうだよねぇ。山爺や僕達はもとより、隠密機動ですら掴めなかった藍染の本性を、白日の下に晒してくれたのは、一護ちゃんなわけだから。」

 隠密機動総司令官でありながら欠片も事態の真相を掴めていなかった砕蜂に口出しする権利はないのだと、言外に滲ませた京楽に、砕蜂は唇を噛む。

「それにしても、折角曲者を捕らえたんだから芋蔓式、にはいかないもんかねぇ。」
「賊の身元は割れている。身辺調査をすれば仲間も割れるだろう。」
「ならば直ちに仲間を突き止めよ。これ以上護廷の不甲斐なさを晒すでないぞ。」
「……はっ。」

 砕蜂が去ると、元柳斎はふうっと深く溜息を吐いた。

「お疲れ様だねぇ、山爺。」
「先生………。」
「黒崎一護は、他にも何か知っておるようじゃが、昨日はそれを明かそうとはせんかった。」
「ああ、うん。それは死神代行戦闘許可証を渡して、監視下に置けば良いんじゃないの?」
「改造魂魄を義魂丸代わりに使われてはそれも叶うまい。」
「なら、なんで許可したのさ?」
「……あの子供に狭量と思われるのは癪でのう。」
「……なるほど。」

 護廷十三隊の総隊長としての矜持と、子供を気に入った一個人と同列ではないという事を感じて、京楽も浮竹も苦笑する。

「それにしても、弱ったねぇ。昨日の会議に出席した者若しくはその周囲に藍染の信奉者がいるという事を示す事態だ。」
「四楓院夜一と黒崎一護は、この事態を見越していたようじゃな。」

 顔を見合わせた三人は深く息を吐く。
 どうやって訊き出せば良いだろうか、と三人が頭を悩ませていると、冬獅郎と乱菊を伴って一護が一番隊舎を訪ねてくる。

「黒崎一護がお話があると訪ねて来ております。」

 一番隊副隊長の雀部長次郎の報告に、渡りに船と早速一語を迎えた三人は、冬獅郎と乱菊の姿に困惑する。
 困惑しながらも、三人は三人を迎え入れた。

「どうしたんだい? 一護ちゃん。」

 浮竹が優しく声を掛けると、一護は小さく息を吐いて冬獅郎に視線を向ける。それを受けて冬獅郎が口を開いた。

「数日前見舞いに来てくれた時に尋ねたら、二度手間になるから総隊長の前で訊けと言われた事なんだが………。」

 冬獅郎が口を開くと、視線が集中する。

「二十年ほど前の鳴木市の死神死亡事件の犯人が、藍染の造った虚だという事を、何故黒崎一護が知っているのかって質問をしたんだ。」
「なんじゃと?」

 元柳斎にも、浮竹・京楽両隊長にとっても初耳の事態だ。
 
「何故、知っておるのじゃ、黒崎一護? そもそも、あの件に出向いた隊長からはそんな報告は受けておらぬぞ。」

 集中する視線の中で、一護は顎を抓んで思考を巡らせる。

「その前に、総隊長さんは、どんな報告を受けてる?」
「む?」

 表情は静かだが、何処か悪戯めいた輝きを瞳に浮かべた一護に、何やら見覚えのある表情だと思いながら口を開いた。

「そうじゃの。当時の十番隊隊長からは『連続死神死亡事件の犯人の虚は葬った』とのみ報告されておるの。」
「………端折り過ぎだろ。」

 一護は溜息を吐いて隊長格を見回して口を開く。

「市丸ギンは十八年前のその時の一部始終を見てたんじゃないかな?」
「ん……⁉」

 一護の言葉に、ギンを呼び付けようとして、ハタと思い留まる。
 ギンを呼び付ける為にはこの場にいない者の手を煩わせる事になり、一護の様子から秘密裏にしておきたい気配が臭う為、躊躇したのだ。
 元柳斎の気遣いに気付いた一護はふわりと笑む。

「市丸ギンを連れてくるなら、乱菊さんと冬獅郎が行けば大丈夫なんじゃね?」
「斬魄刀を取り上げた儘で牢に入れてある市丸を連れて来るのに、俺一人じゃ足りねえってのか?」
「霊枷がしてあっても白打は使えるんだろ?」
「………。」

 言外に体格差を指摘され、冬獅郎が眉を顰める。
 大いに不本意ではあるが、事実を無視出来るほど子供染みた真似は、冬獅郎には出来ない。冬獅郎は結局大人しく乱菊を伴ってギンを連れてくるべく、一番隊隊主室を後にした。

「一護ちゃん、案外意地悪なんだねぇ。」
「死神の癖に、年齢とか隊長とかを現世の生き人である私に持ち出してくる方が悪い。私より年下で死神になってたらその方が問題だろうに。」
「いやぁ。それにしても、日番谷隊長に面と向かって子供扱いするなんてね。」
「中身も大人なら、面と向かって子供扱いされても気にならないと思うけど?」
「そりゃぁ、日番谷君としても見掛けの所為で舐められちゃねぇ……。」
「冬獅郎の見掛けが子供だからって本気で子供扱いするのは、実力を測れない未熟者か、本当に彼より大人な人だろ。」

 一護の返答に、京楽は一瞬黙り、恐る恐る口を開く。

「一護ちゃん? 君、もしかして本当は日番谷君の事、子供扱いはしてないって事かい?」
「当たり前だって。冬獅郎にとって子供の見掛けがコンプレックスになってるみたいだけど、本当に子供だと思ってたら相手にはしないよ。」

 苦笑する一護に、京楽も浮竹も言葉に詰まる。要するに一護は、見掛けにコンプレックスを持っている冬獅郎を揶揄っているという事なのだ。

「……瀞霊廷に殴り込み掛けた事といい、イイ度胸だよね、君。」

 京楽の、呆れたような苦いような声に、一護は苦笑する。
 冬獅郎と乱菊に連れられて隊主室に姿を見せたギンは、一護の顔を見ると溜息を吐いた。三人の後ろから夜一も姿を現す。

「なんやの、一護ちゃん。僕、藍染隊長の情報、そんなに早くあれこれ言う心算あらへんよ?」
「まぁ、そうだろうけど、本当の所を知っているのは藍染と東仙とギンだけだからさ。」
「本当の所?」
「ギンに話してほしいのは、百一年前の浦原喜助と握菱鉄裁が被せられた冤罪の真実と、十八年前の鳴木市での死神死亡事件の犯人である虚が消えた件の一部始終だ。」
「………。十八年前の事は兎も角、百一年前の事は中央四十六室の権威が地に堕ちるんと違う?」
作品名:MEMORY 尸魂界篇 作家名:亜梨沙