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MEMORY 尸魂界篇

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13,真実





 一護の負った傷も白哉の傷も粗治った頃、湯から上がった一護は、晶露明夜を発動する。

「瑠璃月、旋風。」
『はぁい。』

 姿は見えないが、霊的な存在が発した声が白哉の耳にも届く。目を瞠った白哉の様子で、聞こえたらしいと悟った一護は苦笑する。緩やかな風が、一護と白哉に吹き付けて衣服を乾かしていく。

「流石は四大貴族のご当主様だ。瑠璃月の声、聞こえたんだ?」
「それは、なんだ?」
「完現術(フルブリング)だ。現世から一緒に来た仲間の内二人はこの能力を使う。能力の種類は斬魄刀以上に豊富だけどね。」
「完現術……。」

 眉を顰めた白哉に、初代死神代行が完現術者を仲間としていた事を思い出す。

「死神となった私と逢った事で、元々霊力の素養を持っていた友人達が能力を開花させたみたいでね。」
「死神となった兄と……?」
「勿論、虚に狙われた所為で死神の私と接触したんだ。同じ位置にいても開花しなかった友人もいたけどな。」

 服や髪が乾いた頃、一護は溜息を吐いて白哉を見る。

「あんたなら判るだろう? ルキアと恋次は、今何処にいる?」
「………。」
「現世なら兎も角、これだけ霊子濃度が濃いとルキアほど弱ってる霊圧じゃ、私は感じられないんだ。」

 肩を竦める一護に、白哉は溜息を吐いて二人の居場所を探った。
 確かにルキアの霊圧は弱まるだけ弱まってしまっている。一緒にいる恋次の霊圧はいつになく高まっているようで、別人かと思うほどだ。
 二人の傍に東仙要の霊圧を感じて微かに眉を顰めて目を開けると、一護は夜一から借り受けて着ている服の上に死覇装を重ね着している。

「二人の傍に誰かいた?」
「………。」

 無言の白哉に、一護はハッとする。

「まさか、盲目の隊長の、東仙要?」
「……そうだ。」

 さっと一護が顔色を変える。
 一護は天踏絢を掴むと、白哉を引き摺るように連れ出して空へ舞い上がる。

「黒崎一護……! 兄はまたしても何の説明もなしに……っ!」
「ルキアと恋次が危ないんだっ!」

 叱り付けるように白哉に叫んだ一護が目指した先は、先程白哉がルキア達の霊圧を感じた場所ではなく、双殛の丘の上だ。訝しんだ白哉が改めて探ると、双殛の丘の上には、一護の仲間達の他に、恋次とルキア、東仙要、市丸ギン、そして有り得ない筈の霊圧を感じた。
 一護が白哉と共に仲間達の下に降り立つと同時に、織姫、岩鷲、荒巻真木造を除く全員の意識に虎徹勇音の天挺空羅が届く。

「い、いちごちゃん………?」

 事態が飲み込めない織姫に構っている暇はなく、一護は雨竜に説明を頼み、天踏絢を岩鷲に預け、花太郎から巾着袋を受け取ると、みんなから距離を取る。

「…みんなは此処にいて。私は護廷隊が駆け付けるまでの時間稼ぎをする。」
「黒崎……。」
「奴の狙いはルキアだけど、用が済めば惜しげもなくルキアを殺す。私はルキアを助ける為に尸魂界まで来たんだ。むざむざ奴の手に掛けさせて堪るかっ!」

 一護は再び卍解して瞬歩で駆け出す。一瞬遅れて白哉も続き、二人がルキアと恋次が藍染に嬲られている所へ着いた時、一護は寸でで藍染の剣を止める。

「……ほう。朽木隊長と殺り合っていながら傷も負っていないとは大したものだね。」
「お褒めに与り、どうもっ!」
「一護。助けに……」

 来てくれたのか、と続けようとしていた恋次の機先を制して一護が口を開く。

「なんだぁ? いくらルキア抱えてるからって、ボロボロじゃん。何の為に私が白哉との勝負取り上げたと思ってんだ?」
「おっ?」
「逃げる為に瞬歩出来る霊力残す為だろうが。いくら隊長格三人いるからって、瞬歩使う隙も見つけられねぇの?」
「う。うるせぇ……ルキア護る事に気を回し過ぎて、反撃出来ねぇだけだ。」
「………それだけの口が利けるなら、ルキア護れるな。言ったろう。ルキアを護るのはテメェの仕事だって。」
「テメェの言ってた黒幕が、藍染隊長だったとはな。」
「目の前に叩き付けられなきゃ、信じられなかっただろ?」
「確かにな。」
「おや。今度の一件で僕が暗躍している事を、君は矢張り識っていたんだね、旅禍の少年。」

 思いがけず出来の良い生徒がいた教師のような口調で言う藍染に、一護はくすりと笑う。

「私達の行動は、少しはあんたのお役に立てたのかな?」
「ほう?」
「旅禍侵入騒ぎで、あんたはまんまと暗殺されたふりをして地下に潜った。」
「その事に意味があるとでも言う心算かね?」
「なかった筈はないよな? 思ったよりも私達の進行が早くて双殛での処刑を妨げられると踏んだあんたは、双殛以外の方法を探す為に大隷書回廊に入る時間が欲しかったんだろ?」
「大隷書回廊……そんな事まで知っていたとは驚いたな。」

 然して驚いてもいない口調で藍染が言う。

「あんたがルキアの命を奪う気がなけりゃ、あんたの目当ての物なんて簡単にくれてやる事も厭わなかったんだ。」
「おや?」

 今気が付いた、とでも言いそうな口調で眉を上げて見せる藍染に、一護は溜息を吐く。

「僕は手順を間違えたのかな?」
「手順の前に、手段を間違えてんだよ。」
「おやおや。尸魂界に殴り込みを掛けるなんて、それこそ手段を間違えている君には言われたくないなぁ。」
「中央四十六室を皆殺しにして横槍入れた当人が何をほざく。」
「僕が中央四十六室を皆殺しにしたのは勇音君の言うような………。」
「ルキア発見後すぐだろ。」
「! 驚いたね。正解だよ。」

 藍染の言葉を遮った一護に、藍染は本当に驚いた。

「良く判ったね。」
「簡単に判るさ。掟だの形式だのを重んじる中央四十六室が手配したにしては、ルキア捕獲に最初から白哉と恋次を投入するなんて実利優先は怪しかったんだ。」
「……なるほど。だが、君達が現れる所は予想が付いていたから……」
「白道門の内側に市丸ギンを配置した、か?」
「ギンを配置する事も判っていたとでも言う心算かい?」

 余裕で講釈を垂れる心算だっただろう藍染の気概を削ぐ為に、一護は”記憶”と照らし合わせながら予想を立てた事を口にする。

「それが市丸ギンだと予想していたわけじゃない。白道門で私を殺そうとせずに瀞霊廷から押し出すだけに留めたから、市丸ギンがあんたの仲間だと見当が付いたんだ。」
「ほう……?」
「浦原さん絡みの伝手で瀞霊廷に入る手段は残すところは、空鶴さんの花鶴射法だけだ。あれは派手だからね。さぞかし護廷十三隊の気を引けただろう?」
「お陰で実に動き易かったよ。」
「そいつぁ何よりだったねぇ。でも、日番谷冬獅郎や雛森桃を殺す必要はなかった筈だぞ?」

 一護の瞳に浮かぶ微かな怒りに、恋次もルキアも気付いた。

「仕方がない。邪魔だったんだから。」
「明確なお答えだ事。」
「ああ。雛森君は邪魔だったわけじゃないよ。彼女は僕なしでは生きられない。殺していってあげるのが親切というものだよ。」
「たかが五十年傍に置いただけで、雛森さんを永遠に縛れた心算なわけだ?」
「そう仕込んだからね。」
「甘いなぁ。他の事は兎も角、女に関しちゃ年季が足りないよ?」

 一護がくすりと笑う。

「言うね。現世ですら二十年と生きていない子供が。」
作品名:MEMORY 尸魂界篇 作家名:亜梨沙