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吉葉ひろし
吉葉ひろし
novelistID. 32011
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美しさをとどめていてほしい

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入道雲




麗に勉強を教えることに没頭し、私は留美のことを忘れていた。会っている時間の長い麗にどうしても、気持ちが持っていかれる。すでに私と麗との関係は教師と生徒であるから、勉強以外の雑念はお互いになかった。
 夏休みに入ると、麗と私で接する時間は10時間ほどになった。エアコンの効いた部屋であったが、麗は私を男ではなく教師とみているだけに、家族と同じ感覚で、キャミソール姿であった。彼女が机に向かって文字を書く時などは、胸のふくらみが見えてしまう。教師時代にもあったことだが、1対1の中では、私は若さを羨ましく感じていた。
 全国模擬テストで、麗が合格できそうな、私立の医大の判定がDランクになった。ここまでくれば、なんとか合格ラインには届きそうだと私は安心した。
「留美さんとは会ってない」
「勉強ばかりで会う時間もないわ」
「連絡取れないかな、君も医大志望だって話したら、お互い頑張れるだろう」
「そうね、自分のことで頭がいっぱいだった。親友だったのに、薄情だったわ」
麗の表情には、医大志望が現実を帯びたことでゆとりを感じた。
 数日して、私の携帯にメールがあった。開くと留美からであった。

 佐藤先生ご無沙汰でした。麗から連絡があって、メールアドレスを教わりました。
先生もすでに知っているでしょう、信じてもらえないでしょうが、援助交際のことはお芝居なんです。友人を助けたくてしたことです。私の体は青空のように澄み切っています。ご心配させてごめんなさい。

私はメールを読んで、思わず空を見上げた。夏空の中に、真っ白な入道雲が雪山のように感じた。純白は美しいと思わず口ずさんだ。
私は雲を眺めながら、留美や麗が医師になって白い制服を着た姿を思い浮かべてみた。その白さは雪であってほしい。雪は美しいものも汚れたものも、覆い隠してくれる。彼女たちの過去を覆っていて欲しい。せめて医師として活動しているときは、誰もが、彼女たちの過去には触れないで欲しいと、私は願った。白衣の天使。そのものになって欲しい。
 がんばれるから、君たちは美しいから、青春は美しいから・・・