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吉葉ひろし
吉葉ひろし
novelistID. 32011
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美しさをとどめていてほしい

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転機



 たしかに、私が教師の頃から、子供たちの将来の進路は、偏差値によって決められ、幼子が単に言うなりたい希望から、現実的な希望に変えなければならなかった。例えば医師になりたくても、医大に入る能力がなければならない。其れにはかなり前からその勉強をしなければならないのだ。ほとんどの子たちは、進路のことは高校3年になってからはっきりと決める。ある意味決められるのだ。
 麗が教師か公務員と言ったのも、自分の希望というよりは、なれそうだからだろう。ほとんどがそうなのだ。できれば仕事はしたくないだろう。生活のために仕方なくする。
 私もそうだった。教師になりたいわけではなかった。でも、教師をしていくうちに、1人1人の子供たちのことを考え始めた。其れは勉強を教えること以上に大切なように感じた。ある意味、子供たちの一生がかかっていると感じたのだ。
 留美は医師の希望を持っているから、たとえ援助交際が事実であっても、立ち直れるだろう。麗はどうだろうか?私はずるずると墜ちてしまう予感を感じた。
 私は麗に数学を教える約束をしたかった。
「数学は必要ないの。進学は文系だから」
「国立だったら必要だろう」
「国立は諦めているから」
「授業料だって安いぞ」
「今から間に合わないって」
「本気になって何かやったことあるか。ないだろう」
「ピアノ」
「そうか、数学だって面白い。偏差値62にすれば、医大だって夢じゃない」
「留美と同じになれる。留美はあこがれだから、本当かな」
「夢のためなら浪人したっていいじゃないか」
「先生のこと信用したい。麗のわがまま聞いてくれた人だもの。心配してくれる人だもの」
「明日から始めよう」
こうして麗に、勉強を教え始めた。
 高校2年から数学を勉強していないから、基礎から焦らずに教えることにした。
家庭教師ということで麗の自宅で、始まりは不規則であったが、12時まで教える約束にした。と言うのは、別の塾の関係があったのだ。
 有名高校に進学しただけに、麗には潜在的に能力があったのだろう。教えたことの理解が早かった。
 解答があっていると麗は喜んで
「同じような問題出して」
 と言うまでになった。