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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「サスペンス物語 京都の恋」 最終話

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この年齢で美代子は乳がんに罹っていた。
乳房を少し切除したことを尚樹には話せなかった。
仲良くなってお互いが求める気持ちになった時、それは相手に知れる。

悲しくて、悲しくて、どうして自分がというやるせない気持ちと、いま尚樹に出会えたことは自分を救ってくれる救世主に出会えたかも知れないという迷いに心が乱れる。

夜になって電話が掛かって来た。

「今日は急にそっちへ行ってごめんな。新幹線の中で何度も何度も自分に言い聞かせてん。やっぱり諦めるの無理や。親に話して、高校出たら働くようにするからぼくとのこと真剣に考えてくれへんか?」

嬉しかった。素直に尚樹の気持ちに涙が出た。

「ありがとう。今はね尚樹くんの事しか頭にないよ。でも話さないといけないことがあるから、もう少し時間を頂戴。他の人と付き合ったりは絶対にしないし、そんな気持ちもない。それは信じて」

「うん、ええけど、話やったら今聞くで」

「ゴメンなさい、もう少し待って」

「そうか、元気出さなあかんで。また電話するわ、そんならおやすみなさい」

「待ってるね。おやすみなさい」

電話を切ると堪えていた気持ちが解き放たれ、声を上げて美代子は泣いた。
泣いて、泣いて、どうにかなるわけではないが、それでも涙が尽きることは無かった。

あの日、大学生だったあの日、彼からの連絡が途絶えて、待ち続けてやっとどこにいるのか解った時、既に手遅れの状態だった。
なぜこんな目に遭うのかと悲しみに暮れて、勉強なんか続けられないと親元へ帰った。

そして、今度は両親と兄が乗った車がトンネル内での多重衝突事故に巻き込まれて命を失ったことを知り、それこそ絶望の淵に立たされた。
葬儀の時に親戚から言われた言葉は、みんなの分まで一生懸命に生きないと供養にならないだった。

大学を辞めて中途半端だった生活を改め、出版関係の仕事に就いて過去と別れようと出かけた京都で再び過去に出会った自分がいた。
交際するには対象にならないような高校生に心をときめかせて、自分の過去とさようならをする決心が出来た矢先に職場の健康診断でガンが見つかった。

何もかもが自分を不幸にするために回っているとしか思えなかった。
尚樹に迷惑を掛けたくない、そう感じたことは本当だ。
こんなことに負けてはいけない、そう思うことも本当だ。
たとえ命がなくなることが分かっていても、最後の最後まで信じる人の傍にいたい。

毎日のように心が揺れていた。
そして、尚樹からの電話、東京に来たという連絡が、乾いた心に染み込んだ。
夏休みが過ぎて、しばらくして胸に張りを感じるようになり、再び病院で検査した。
どうやら再発の疑いがあると診断された。