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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「サスペンス劇場 恩返し」 最終話

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平家落人の伝説が残るこの村へ村林隆がやってきたのは、その徹底取材のためだった。二年通って得られた語り部たちの内容より今聞いた話は何倍もすごい事であった。
なぜこれまで聞かせてくれなかったのだろうと思うと残念な気がしていた。

「いまお狐様のお帰りと言われましたね?どういうことなのでしょう」

「お前さんが体験した詩乃という女は最後になるだろうお狐様の子孫じゃ」

「狐の子孫?人間でしたが・・・」

「雪が降る夜になるとお狐様は女性(にょしょう)に変化するのじゃ」

「狐が人間の女に化けるということですか?」

「化けるのではない。本来は人であったのじゃ」

「では、狐に化けるということですね?」

「いや、そうではない。狐になるのは仮の姿。生まれは人であったのじゃ。しかし、彼女たちは身を隠すすべを狐の姿に変えることで守り続けてきた」

「なぜそのようになったのでしょう?ほんとうだとすれば」

「ここの先にある名もない平家の落人たちが暮らしておった閉ざされた村には遠く壇ノ浦から流れてきた数名の落人たちが住んでおった。一向は全員が女で子供を産むことは出来たが、男がおらんかったのでどうすればよいのかと考えておった。他所の村へ行くと素性がバレるので小さな祠に祀ってあった氏神様に何年も何年も祈っておったんじゃ」

「鎌倉時代のお話ですね。ここが落人の住んでいた村ではなかったのですか?」

「そうじゃ。村の女たちの願いは一人だけ叶えられることになった。それは氏神のお告げで雪の降る寒い夜に狐に姿を変えることが一日だけ許される呪文を与えられたのじゃった」

「一日だけ狐の姿に変わることが出来る呪文・・・一日だけ・・・」

隆はハッとした。一昨年助けたあのキツネはもしかして女に変身するために居たのだろうか。
だとしたら自分が見つけたことにより諦めて帰っていったのだろう。
翌年にまた来るであろうことをどうして知ったのか不明ではあったが、詩乃という女は助けたあのキツネが変身したのだとすれば、一昨日の誘いも決して偶然ではなかったのだ。

「選ばれた女は狐に姿を変えてこの鬼無里村にやってきて、人知れず元の姿に戻り旅の侍や村の男と関係を持ち、妊娠して自分の村で子供を産む。なぜか今の時代まで男子を生むことが出来ず、やがて時代が進み、明治になって彼女たちは発見されここらあたり一帯は鬼無里村として統合された」