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吉行潤一郎
吉行潤一郎
novelistID. 64414
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正月

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暖かな日差しとは対照的に,冷気をまとった鋭い風は容赦なく衣服の内に入り込もうとしている.誰もが必死にその身を縮こませ,自身の熱を奪われんとする.男は凧を上げ走り回る子供たちに,冷ややかな目で見ると体をふるわせた.土手は高く,そこを歩く男は町内をくまなく見渡すことができた.男はめでたい気分でいる町内の人間が皆,自分の足元にいるように感じ,何の目的もなくこのようなところまで来てしまったが,何かしらの収穫は得られたと考えた.
少しすると男は橋の前で立ち止まった.男は橋を渡り向こう岸へ行ってみるか,それとも家に戻るか迷っていた.しばらく橋の方を見ているとにわかに猛烈な向かい風が吹き始めた.男は生活の内でわずらわしさを極端に避ける反面,21歳にしては子供じみた天邪鬼でもあった.彼は突然の向かい風をまるで自分を狭い町内に押し戻す壁のように思い,苛立ちを感じた.彼はゆっくりと前のめりになりながら慎重に進んでいった.橋の半分を過ぎたとき風は弱まり,彼が早くわたってしまおうと早足になっていた.橋を渡り終えた瞬間彼は今の天気が雲一つない快晴であり,その日差しの温かさに初めて気付いたのだった.
作品名:正月 作家名:吉行潤一郎