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藍城 舞美
藍城 舞美
novelistID. 58207
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しばらくぶりのLove Letter

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 ― カナダ、トロント市内のとある住宅街 ―

 降りしきる雪の中、1人の主婦が、野菜やパンなどの入ったショッピングバスケットを片手に、家に帰ってきた。すると、アジア系に見えるが彫りの深い顔立ちで、黒っぽいくしゃくしゃの髪をした郵便屋さんのような出で立ちの男が、真っ赤な自転車を立ち漕ぎしながら彼女の家の前を通ろうとした。見事なファルセットを利かせた鼻歌を響かせながら。その男は、そこの家の世帯主と目が合うと、自転車を降りて帽子を外して、
「おや、奥さん。こんにちは」
 と明るく挨拶した。
「あら、こんにちは。お兄さんは郵便屋さんですか」
 その主婦が尋ねると、
「お察しのとおり。私、ケン・ポストマンと申します」
「ケン・ポストマン…」
 ケン・ポストマンと名乗るその郵便屋さんは、身分証明と言わんばかりにカバンから封筒と便箋のセットを取り出した。
「今日はですね、お手紙を受け取りに来ました」
「えっ、手紙?私、最近、手紙は書いてないのだけど…」
「奥さんが届けたい人なら誰にでも、お届けします」
 それを聞いて、主婦は目をぱっちり開いた。
「今、何と…」
「『奥さんが届けたい人なら誰にでも、お届けします』と申し上げました」
 主婦は二度ほど呼吸をして、ケン・ポストマンに尋ねた。
「本当に、誰にでも届けていただけるのですね?」
「はい。このケン・ポストマンが必ずお届けしますよ。お任せください」
 ケン・ポストマンは確信に満ちた笑顔でうなずいた。主婦には現実離れした話に聞こえたが、この郵便屋さんの笑顔を見ると、不思議と彼を信頼できる気がしてきた。彼女はケン・ポストマンから封筒・便箋セットを受け取ると、家に入って早速手紙を書いた。

 それからおよそ1時間後…。
「はい、お手紙、確かに受け取りましたからね。では、私はこれで!」
 ケン・ポストマンは、さわやかに手を上げると、鼻歌を歌いながら自転車を漕いで去っていった。

 ― その10分後、ケン・ポストマンの自転車は、わき見運転をしていた軽自動車とぶつかってしまった ―
「何てことだ!郵便屋さんが車とぶつかった!」
「急いで、急いで救急車を呼べ!」