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気配

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冬の陽射しが独書室ことボクの部屋のリビング兼仕事場の窓から差し込んでいる。
こんな暖かな日には きっとキミはやってくるんだろうな。もう何度キミはボクの部屋に来てくれただろうか。それなのにボクは 幾つ季節が巡ってもキミが来る予感に心が踊る。
そして、弾んだ気持ちで浮かんだフレーズを原稿用紙に書き止めるボクが居る。

陽が部屋の中ほどまで入っているのは、カーテンがきっちり左右に開かれているからだ。
仕事中に眩しくて ほとんどいつも閉めている布きれ。
キミと選んだ奇怪な模様のカーテンの次に買った平織の布地にマーブリングで描かれたような柄の色彩豊かなカーテンは ボクの失敗でミートソースつけてしまったうえに そのニオイが日に日に気になる異臭化していくのに耐えられず、ボクの独断で選んだカーテンに替わっていた。
それに気づかれないようにキミが来そうな日は カーテンを全開にしてまとめておいているのだ。姑息なヤツだなぁと何度も自分を責めるのだが、キミが何も言わないから それもいいかとボクも何も言わないでいる。
眩しさは、机の位置を少し変えただけで解消された。
なんだ、こんなもんなのか? こだわりの配置もあっさりと掃き捨てられた。そしてよい事に この新鮮な気分がボクのお気に入りの万年筆を軽快に走らせてくれた。

そんなことを思いながら仕事をしていると、玄関が開いた気配がした。
ここのところ仕事の打ち合わせを含め、外で逢うことはあったけれど この部屋にやってくるのはいつから振りだろうか?
玄関のドアが開いてすぐに物音がした。
あぁ、あれは、年末に片付けた箱や雑貨のゴミ袋が倒れたんだな。
玄関回りに置いておいて邪魔だったかなとキミに申し訳ない気がした。

ドスッ。
「にゃ! にゃにゃぁー」 
バタッ。
「痛!にゃん」

こんなときまでネコ科しているキミに呆れたような笑いを口角に表したが やっぱり可愛いキミが早くボクの後ろに現れないかと気配を待っていた。

気配がしない……
気配が消えた? 
そんな どうした? まさか?

ボクは、待ちきれず振り返ったが、まだボクの居るリビングには姿がなかった。
一瞬、寒気がした。 あ、それは日が陰ったからかもしれない。
そんなことは冗談にするとしても、ボクの期待がいないものを感じさせてしまったのだろうか? いやボクの生きてきた中で不思議な経験の欠片も特異体質でもないごく普通のヒトである意識しか自分にはなかった。

作品名:気配 作家名:甜茶